最近ブログをサボり気味だったのですが、久々に再開します。
今日のテーマは私もあまり詳しくない内容ですので、文献を参考にみなさんと一緒にお勉強したいと思います。
APD(聴覚情報処理障害)とは
難聴とは何かと聞かれれば、聴力検査で大きな音を聞いても聞き取れない状態と一般的には理解されていると思います。
高齢者の難聴(加齢性難聴)が典型的で、小さな声や音が聞き取れない、テレビのボリュームが大きくなるのはこのためです。
しかし、聞こえづらいと一言で言っても、普通の難聴とは異なる状態があります。
その一つがAPD(聴覚情報処理障害)です。英語のAuditory Processing Disorderの頭文字を取ってAPDです。
APDは一言でいえば「聞こえているのにわからない」という状態です。
正確な定義としては「聴覚情報を処理する中枢神経システムの問題で,音源定位,側性化,聴覚識別,聴覚パターンの認知,聴覚情報の時間的側面の解析,競合音下での聴知覚,歪み語音の聴取のうちいずれか,もしくは複数の機能に問題が生じた状態(ASHAのワーキンググループの報告:2005年)」と書かれています……。
ちょっと何言っているか分かりませんね。
一体どういうことなのでしょうか?
APDの症状とは?
APDにはどのような症状があるのでしょうか?
APDの方は、聴力検査をしても正常なのに、言葉が聞き取りにくいのです。「聞こえているのにわからない」。
患者さんは言葉の聞き取りが低下し、コミュニケーションや学業・仕事に支障を来しているにもかかわらず、聴力検査が正常なので、病院を受診して検査をしても「聞こえは正常ですね」と言われ、周囲からは理解してもらえず悩んでいるのです。
APDの症状で困っておられる当事者の会のホームページには、その症状がわかりやすい言葉で書かれています。
・聞き返しや聞き誤りが多い
・雑音など聴取環境が悪い状況下での聞き取りが難しい
・口頭で言われたことは忘れてしまったり、理解しにくい
・早口や小さな声などは聞き取りにくい
・長い話になると注意して聞き続けるのが難しい
・視覚情報に比べて聴覚情報の聴取や理解が困難である
(「APDの理解と支援」より引用)
聴覚情報処理障害とは
APD(聴覚情報処理障害)当事者会 APS
APD(聴覚情報処理障害)当事者会 APSとは、APD症状で困難や苦労、悩みを抱える当事者が集まりつながる会です。 ゆるいつながりを通して人生がより良い方向へ進むきっかけとなればと思います。 また、APDを広く知ってもらうこと、当事者のAPD症状が少しでも改善しより良い生活につながることを目指し活動をしています。 「APD Peer Support」でAPSを略称とします。 …
APDの診断・検査
APDの診断や検査法については、まだ確立されたものがないようです。
APDと症状が類似していて区別が必要な病気としては、別の聴力障害(Auditory neuropathyなど)や発達障害(ASDやADHD)、脳梗塞などがありますので、特殊な聴力検査や画像検査を適宜用いて別の病気を除外する必要があります。
APDへの支援
APDの根本的な治療は今のところ難しいと言われています。
そこで、困っている患者さんに対しての支援が求められます。
(1)環境調整
APDの方は雑音の中で会話をするのが苦手なので、雑音を極力減らす環境作りや、話し相手との距離を縮める工夫が必要です。会議は少人数で行うとか、教室での座席はなるべく前にするとか、教室の椅子の脚にテニスボールをはめ込んで雑音を減らすなども具体的な方法です。
(2)聴覚を補助する機器の導入
デジタル式補聴援助システムを導入する。テレビの音を無線で手元のスピーカーに飛ばしたり、電話の音声をノイズキャンセリングヘッドホンで聴くなどの方法もあります。
(3)言語聴覚療法
正確に言葉を聞き取るためのトレーニングのみならず、正確に聞き取れなかった時の聞き返しの仕方、会話を続けるためのヒントを相手から引き出す術などを身につけることも重要です。
また、話しかける側の人の立場から言えば、会話のテーマをあらかじめ伝えておくとか、聞き取りやすい速さでしゃべるとか、文字を利用するなどの工夫が必要です。
一口に難聴といってもいろいろあるんですね。患者さんは他の人との大事なコミュニケーションが取れず、大変困っておられるんですね。
私も患者さんの立場に立って診察にあたりたいと思います。
参考文献:
益田 慎. 聴覚情報処理障害の診断と対応. 日耳鼻. 2020; 123 (3): 275-277.
DOI:10.3950/jibiinkoka.123.275
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