めまいを経験したことのある人は、その大変さを身にしみて感じていると思います。
自分はその場にじっとしているのに、周りの景色がぐるぐるまわったり、ふわふわとしてきたり、そのために吐き気をもよおして、立っていられなくなったりします。
最初に起きる強い症状は、点滴をしたり薬を飲んだり、安静にしたりすれば、たいていは良くなってきます。
その後、すっきり治ってしまう人もあれば、なんだかふわふわした感じ、揺れる感じが長く続く方もあります。
そのような慢性のめまいに対しては、めまいリハビリテーションが有効と言われています。
末梢性めまい(耳や三半規管などが原因のめまい)では、三半規管の働き(前庭機能)の左右のバランスがくずれて、めまいが起きます。前庭機能の良い側と悪い側があるということです。
そうすると左右のバランスを戻そうとして、良い側の小脳(脳みその下の方にある部分)が働いて、同じく良い側の前庭機能を抑えて、左右の差を少なくしようとします。これが小脳の中枢代償です。
その小脳の中枢代償がより起こるようにするために、めまいのリハビリテーションが有効と言われています。
下に示す論文は、インターネットを用いためまいリハビリテーションが有効かどうかを調べたものです。
実際に医療者と対面して行うリハビリももちろん有効ですが、今回のようなインターネットを用いた遠隔でのリハビリも有効であると示されています。
今、しきりにICT(情報通信技術)の活用がなされていますが、めまいのリハビリもICTが活用できそうですね。
ではめまいリハビリでは、どんなリハビリを行うのか。これについては、別の機会にお話ししようと思います。
今回参考にした論文は、
van Vugt VA, et al. Internet based vestibular rehabilitation with and without physiotherapy support for adults aged 50 and older with a chronic vestibular syndrome in general practice: three armed randomised controlled trial. BMJ. 2019; 367: l5922.
です。
Research Question:
慢性前庭症候群に対するインターネットを用いた前庭リハビリテーションの有効性と安全性を調査する。
方法:
対象:
50歳以上の慢性前庭症候群の患者 322名
(オランダの一般開業医に通院する患者)
デザイン:
3群の並行群間ランダム化比較試験
割り付け:
ネット単独群:週1回のオンラインセッション、毎日の運動(10-20分/日)
を6週間行う。
ネット併用群:ネット単独群の介入に、対面の理学療法サポートを追加
(1週目と3週目に訪問)。
標準ケア群 :一般開業医から制限なしで標準的なケアを受ける。
評価項目:
主要評価項目:6カ月後のVertigo symptom scale-short form(VSS-SF)
(スコアは0〜60、3点以上の差があると臨床的な差がある)
副次的評価項目:めまい関連障害(dizziness handicap inventory:DHI)
不安症状(generalized anxiety disorder assessment: GAD-7)
抑うつ症状(patient health questionnaire: PHQ-9)
前庭症状の主観的な改善
有害事象
結果:
- ネット単独群 98名、ネット併用群 104名、標準ケア群 120名が割り付けられた。
- ITT解析で、ネット単独群およびネット併用群は、標準ケア群よりも6カ月後のVSS-SFスコアが低かった。
調整済み平均差:ネット単独群 -4.1点 [-5.8 to -2.5]
ネット併用群 -3.5点 [-5.1 to -1.9] ※[]は95%信頼区間 - 3カ月後の時点でも、ネット単独群およびネット併用群のほうが、標準ケア群よりも、VSS-SFスコアが6カ月後と同程度に低かった。
- ネット単独群およびネット併用群において、3カ月および6カ月後のめまい関連障害(DHI)の減少、不安症状(GAD-7)の減少、前庭症状の主観的な改善が得られた。抑うつ症状(PHQ-9)については、有意な改善は認めなかった。
- オンライン前庭リハビリテーションに関連する重大な有害事象は認められなかった。
結論:
インターネットを利用したオンライン前庭リハビリテーションの単独施行あるいは併用は、臨床的に有効でかつ安全な治療であった。
オンライン前庭リハビリテーションは容易に利用出来るものであり、従来の方法で十分改善しなかった患者の症状を改善する可能性がある。