風呂上がりに綿棒で耳掃除、気持ちがいいので毎日のようにやっている人も多いのではないでしょうか。
「膝枕をして奥さんに耳かきをしてもらうのは、至福の時間です」という人も中にはあるかもしれません。
しかし、耳かきのしすぎは禁物なのです!
耳かきのしすぎはなぜ悪いのか
耳かきのしすぎはなぜいけないのか。これについては、以下の記事に書きましたので、是非読んで下さい。
耳かきのしすぎに注意!耳鼻咽喉科医が教える「耳かきの意外な常識とコツ」
耳かきはどれくらいの頻度でされていますか?耳かきは気持ちよいので、毎日している人もいるかもしれません。ところが耳かきのしすぎは良くないどころか、さまざまデメリットがあるそうなんです。耳かきの新常識とコツについて、耳鼻咽喉科医の徳永先生にお聞きしました。
耳垢が詰まったり、炎症を起こしたりするだけならまだよいですが、なんと耳かきが癌の原因になっているかもしれないと聞いたら、皆さん驚かれるでしょう。
耳かきは癌になりやすい!?
一般的に癌になる原因としては、喫煙、アルコール、ウイルス、ヘリコバクター・ピロリ、放射線、紫外線など、様々なものが関与していると言われています。
それ以外にも、慢性の炎症や、慢性的な物理的刺激も癌の原因となる場合があります。例えば、とんがった歯が舌にずっと当たり続けていると舌癌になってしまったり、合っていない入れ歯が歯茎に強く当たっていると、その部分に癌ができてしまうこともあります。
耳かきを頻繁に行うと、外耳道(耳の穴)の皮膚に対して慢性的な刺激が加わるため、それが耳の癌(外耳道癌)の原因になるのではないかと言われています。
外耳道癌は癌の中でもまれな癌ですが、なかなか診断しにくく、治療をするときにはかなり進行していて、治療に難渋する場合も多い癌です。
下に示した論文は、日本の研究ですが、外耳道癌患者の利き手、耳かき習慣を調べることで、耳かきと外耳道癌との関連を推測した論文です。
(ちなみに、耳かきは日本独特の文化のようで、他の国々ではあまりされていないそうです)
それによると、ほとんどの外耳道癌患者に耳かきの習慣があり、中には1カ月に200本の綿棒を消費する人もいたそうです!
そして、ほとんどの患者(33人中30人)で、利き手側の耳に癌ができていました。
耳かきというのは繊細な動作なので、利き手側の耳のほうが耳かきをしやすいと考えられます。実際に、今回の研究でも利き手側の耳をより多く耳かきする人が多かったようです。
外耳道癌の発症数は少ない為、なかなかエビデンスの高い研究はできないですが、耳かきによる物理的刺激が外耳道癌の原因の一つになっていると思われます。
耳かきはほどほどに。かゆみが続いたり、耳垢が気になるときは、耳鼻咽喉科を是非受診してください。
今回参考にした論文は、
Tsunoda A, et al. Right dominance in the incidence of external auditory canal squamous cell carcinoma in the Japanese population: Does handedness affect carcinogenesis?. Laryngoscope Investig Otolaryngol. 2017; 2(1): 19–22.
doi: 10.1002/lio2.43
です。
Research Question:
外耳道扁平上皮癌(EACSCC)の発生率と利き手に関連があるか。
方法:
デザイン:
後ろ向き症例集積研究
対象:
EACSCC患者 68例(2001年〜2015年)
(その内、利き手が調査できたのは34例)
調査内容:
患側、利き手(左利きの場合右利きへの矯正を受けたかも調査)、
外耳道のかゆみの有無、耳かきの習慣、耳かき器具の種類
結果:
- EACSCCの発生部位は右側が52例、左側が16例であり、有意に右側が多かった(p<0.001)。両側発生はなかった。
- 耳かきと利き手について調査ができた34名全例で、程度の差こそあれ耳のかゆみを訴え、習慣的に耳かきをしていた。また全例で健側の外耳道にも湿疹を認めた。
耳かき頻度の詳細は以下の通り。- 3名は毎日複数回耳かきをしていた。うち1名は月に200本の綿棒を使用していた。
- 7名は毎日、2名は1日おきに、1名は月に2回耳かきをしていた。
- 16名が回数は不明だが「頻繁に」耳かきをしていると回答した。
- 2名は「時々」と答え、3名は「不明」であった。
- 耳かきの左右差について
- 15名(右利き14名、両利き1名)は、主に右耳を多く耳かきしていた。その全員が右耳に発癌した。
- 6名(右利き4名、左利き2名)は、均等に耳かきしていた。右利きの4名中3名が右に発癌し、左利きの2名はみな左に発癌した。
- 右利きは29例、左利きが4例、両利きが1例であった。
- 右利き 29例中27例が右側にEACSCCが発生した。
- 左利き 4例中3例が左側にEACSCCが発生した。
- 両利き 1例は右側にEACSCCが発生した。
- ほとんどの症例で利き手側にEACSCCが発生しており、統計学的に有意であった(Fisherの正確検定:p=0.0070)。
- 多く用いられた耳かき器具は竹の棒と綿棒であった。
結論:
耳かきのような外耳道への機械的刺激は、EACSCCを引き起こす可能性がある。耳かきは繊細な操作を必要とするため、利き手と関連してEACSCCが発生する傾向があるかもしれない。
本研究は、利き手とEACSCC発癌の関係についての初めての報告である。