★で始まるブログは一部医療従事者向けの内容を含みます。詳しくは「このサイトについて」をごらんください。

★タバコは難聴のリスクを高める

 タバコは、いろいろな病気の原因になっていたり、病気にかかるリスクを高めると言われています。肺癌やのどの癌などは有名ですが、心臓病や脳卒中など様々な病気で言われています。

 では、タバコと難聴との関連はどうなのでしょうか。

タバコは耳に悪い影響を与える

 いままでに行われた研究によると、タバコは耳にいろいろな悪影響をおこすことが分かっています。

 例えば、ニコチンが直接内耳に毒性を持っているという報告があります。また、一酸化炭素と結合したヘモグロビンの影響で内耳が虚血(血のめぐりが悪くなること)になったり、喫煙に伴って血液の粘りけが上昇することによって内耳に影響を与える可能性が示されています。

タバコは難聴のリスクを高める

 下に示した論文は、日本の50,000人以上の健診結果を最大8年間追跡し、喫煙と難聴との関連を調べた研究です。

 それによると、タバコを吸う人は、吸わない人と比べて、難聴のリスクが高く、吸う本数が多ければ多いほどさらにリスクが高まるという結果でした。

禁煙すると難聴のリスクが低くなる

 また、禁煙をすることで難聴のリスクは改善することも分かりました。しかも、5年未満という短い禁煙期間でも改善することが分かりました。

 タバコは万病の元。難聴の予防のためにもタバコは止めましょう!

 他にも難聴のリスクを高める要因について研究がなされています。このブログでも紹介したので、是非ご参照ください。

★血圧が高いと難聴になりやすいのか? | 耳鼻咽喉科医の独り言

普段何気なく音や声を聞いている耳ですが、聞こえにくくなると日常生活で様々な不都合が出てきます。 「最近、妻の言っていることが聞き取れなくて、ケンカばかりしています」「家族からテレビの音が大きいって言われるんです」  高齢になると耳が聞こえづらくなって、耳鼻咽喉科に来られる方が多くおられます。……

★太りすぎ、メタボは耳によくないの? | 耳鼻咽喉科医の独り言

肥満や メタボリック症候群 は、いろいろな病気のリスクを高めると言われています。   脳卒中や 心臓病 など命に関わるような病気もあるため、健康のことを考えて、運動や食事に気をつけている方もいると思います。  では、 難聴と肥満・メタボとの関連 はどうなのでしょうか。 ……

 

今回参考にした論文は、
Hu H, et al. Smoking, Smoking Cessation, and the Risk of Hearing Loss: Japan Epidemiology Collaboration on Occupational Health Study. Nicotine Tob Res. 2019; 21(4): 481-488.
doi: 10.1093/ntr/nty026
です。

Research Question:

 喫煙と難聴のリスクとの関連はあるのか。

方法:

 デザイン:
  前向きコホート研究;日本産業衛生疫学共同研究(J-ECOH)
 対象:
  ベースライン時に難聴のない20~64歳の労働者 50,195名
  (2008年1月~2015年12月あるいは2008年4月~2016年3月に取得した
   健康診断データを用い、最長8年間追跡された)
  (参加企業は11社 [12事業所])
  (ベースラインは2008 年のデータを主に用いたが、大量の欠落データが
   ある場合には、2009 年または 2010 年のデータをベースラインとした)
 検査:
  年に1回の純音聴力検査(1kHzと4kHz)
 難聴の定義:
  1 kHzで30 dB以上の聴力閾値、
  4 kHzで40 dB以上の聴力閾値をそれぞれ難聴と定義した。
 統計解析:
  喫煙と難聴との関連はCox比例ハザードモデルを用いた。
  ・共変量として、年齢、性別、勤務先、BMI、心血管疾患の既往歴、
   高血圧、糖尿病、脂質異常症の既往を用いた。
  ・一部のデータ(31440名)を用いた感度分析には職業性騒音曝露、
   アルコール摂取量、余暇時間の身体活動も用いて調整した。

結果:

  • 追跡期間中、3,532人(7.0%)が4kHzの難聴を発症し、1,575人(3.1%)が1kHzの難聴を発症した。それぞれ1000人年あたりの発症率は12.2と5.3であった。
  • 喫煙者の調整ハザード比(HR)は、非喫煙者と比較して、
    4kHzの難聴で1.6 [1.5-1.7]、1kHzの難聴で1.2 [1.1-1.4]であった。
  • 感度分析において、職業性騒音曝露、アルコール摂取量、余暇時間の身体活動をさらに調整しても、同様の関連が観察された。
    喫煙と職業性騒音曝露との間の相互作用は統計的に有意ではなかった。
  • 難聴のリスクは、1kHz、4kHzいずれも、1 日あたりの喫煙本数に応じて増加した(p for trend<0.001)
    • 4kHzの難聴の調整HRは、
      1~10本/日:1.4 [1.2-1.6]
      11~20本/日:1.6 [1.5-1.8]
      20本/日以上:1.7 [1.5-2.0]
    • 1kHzの難聴の調整HRは、
      1~10本/日:1.1 [0.9-1.4]
      11~20本/日:1.2 [1.0-1.4]
      20本/日以上:1.4 [1.1-1.8]
  • 元喫煙者の調整HRは、非喫煙者と比較して、
    4kHzの難聴で1.2 [1.1-1.3]、1kHzの難聴で0.9 [0.8-1.1]であった。
  • 禁煙年数別の解析では、ベースライン時より前に5年未満しか禁煙していない人でも、禁煙後の難聴リスクは低下が認められた。
    • 4kHzの難聴の調整HRは、
      5年未満前に禁煙:1.2 [1.0-1.4]
      5~9年前に禁煙:1.1 [0.9-1.3]
      10年以上前に禁煙:1.1 [1.0-1.3]
    • 1kHzの難聴の調整HRは、
      5年未満前に禁煙:0.9 [0.7-1.3]
      5~9年前に禁煙:0.8 [0.5-1.1]
      10年以上前に禁煙:0.9 [0.7-1.1]
  • []内は95%信頼区間。

結論:

 喫煙は、喫煙量に依存して、特に高音域で難聴リスクの増加と関連していた。また喫煙に関連した難聴リスクは、比較的短期間の禁煙で改善した。
 本研究は、喫煙と自然経過による難聴との関連を調査した、これまでで最大規模の研究である。

1件のピンバック

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です