鼻の中は狭い空間しかないように思っている人が多いかもしれませんが、実は鼻の周りにはたくさんの空洞があります。これが副鼻腔です。
この副鼻腔の粘膜がはれたり、鼻水がたまったりするのが副鼻腔炎です。
特に、慢性副鼻腔炎とは、8週間以上症状が続く場合を言います。
「私、副鼻腔炎なんですよ。なのでよく風邪ひくとひどくなりやすくて」
と言われる方がよく外来に来られますが、
はたして、どんな人が風邪をひくとひどくなりやすいのでしょうか。
3000人近くの副鼻腔炎患者さんのデータを元にアメリカで行われた調査では、
副鼻腔の粘膜の腫れや鼻水のたまりがひどい人、気管支喘息の症状がひどい人が、風邪をひくとひどくなりやすいという結果でした。
「副鼻腔炎(鼻)なのに喘息(肺)が関係あるの?」
と思われるかもしれませんが、鼻や副鼻腔(上気道)と肺や気管支(下気道)は密接な関わり合いがあると言われています。
副鼻腔炎と喘息の両方にかかっている人は、両方の症状をしっかり治療することがとても大切です。
そして、風邪になるとひどくなりやすい人は、まず副鼻腔炎がないかどうかをしっかり診断してもらいましょう。
副鼻腔炎と診断された場合にはしっかり通院して副鼻腔炎の治療をし、通院だけで治らない場合には手術で副鼻腔をきれいにすることで、ひどくならないようになるでしょう。
すっきりした鼻で毎日過ごしたいですね。
今回参考にした論文は、
Kwah JH, et al. Clinical factors associated with acute exacerbations of chronic rhinosinusitis. J Allergy Clin Immunol. 2020 Jan 29.
です。
Research Question:
慢性副鼻腔炎の急性増悪に関連する臨床的因子を調べる。
方法:
対象:
ノースウエスタン大学病院を2014年1月1日から2016年5月31日に受診した
慢性副鼻腔炎患者(18歳以上)
急性増悪(AECRS)の定義:
副鼻腔炎症状の悪化に対して抗菌薬が投与された場合
・年間4回以上投与された群→frequent AECRS群
・年間3回以下投与された群→infrequent AECRS群
結果:
- frequent AECRS群は600名、infrequent AECRS群は2509名であり、AECRS群は全体の19.3%であった
- infrequent AECRS群と比べて frequent AECRS群は女性、非白人の割合が有意に多くBMIの平均値は有意に高かった。
- 年齢、人種、性別を補正した多重ロジスティック回帰分析の結果、 frequent AECRSになる因子として気管支喘息 (2.61)、アレルギー性鼻炎 (1.96)、好酸球数≧150/µL (1.54)、自己免疫疾患 (1.68)が得られた(括弧内は調整済みオッズ比)。
- 副鼻腔CT所見、気管支喘息重症度、経口ステロイド内服の有無を比較すると frequent AECRS群のほうが上気道および下気道の炎症の度合いが強かった
結論:
上気道および下気道の炎症が強いとAECRSになりやすく”unified airway hypothesis “の概念と一致している
AECRSになりやすいフェノタイプが認められる場合には、生物学的製剤や副鼻腔手術により早期の介入を行って、急性増悪を減らすことを考えた方が良いだろう。
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