花粉症シーズンまっさかりですが、新型コロナウイルスの影響で、マスクが品薄になっていますので、花粉症の方はお困りかもしれません。
また、仕事上マスクをして過ごせない人もおられるかもしれません。
マスクが手元になくても、花粉を防ぐ方法はないものでしょうか。
それがワセリンを鼻や目のまわりに塗るという方法です。
ワセリンは、いろいろな塗り薬の基剤となっているもので、保湿剤としても使われており、ドラッグストアにも売っています。
ワセリンを目や鼻の周りに塗ることで、花粉がワセリンにトラップされて、それ以上奥へ入っていきにくくなります。
また、花粉がワセリンに包まれることで、その抗原性(アレルギーの原因となる性質)が失われるとも言われています。
ワセリンの花粉症・アレルギー性鼻炎に対する効果を調べた論文はいくつかありますが、その1つを下に紹介しました。
この研究では、鼻の入り口にワセリンを塗ると、偽薬と比較して、鼻炎症状を改善し、鼻の通りも良くなるということが示されています。
ワセリンの力も利用して、花粉シーズンを快適に過ごしましょう。
ワセリンのことについては、以下のサイトにも寄稿しました。
【2020年版】専門医の教える花粉症対策 “意外な方法”が花粉を撃退!
今年のスギ花粉は、例年の飛散数と比べてやや少なめと予想されています。昨年の夏は、例年に比べて梅雨が長引いて豪雨も多く、日照時間が少なかったためです。(北日本の一部では例年より多くなる見込み)『あんしん健康ナビ 花粉症・アレルギー性鼻炎』の著者、耳鼻咽喉科医の徳永貴広先生に花粉症対策をお聞きしました。
また、拙著「あんしん健康ナビ 花粉症・アレルギー性鼻炎」にも書いてありますので、是非お読みください。
※KazooさんによるイラストACからのイラスト を使用しています。
今回参考にした論文は、
Schwetz S, et al. Efficacy of pollen blocker cream in the treatment of allergic rhinitis. Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 2004; 130(8): 979–984.
です。
Research Question:
季節性あるいは通年性アレルギー性鼻炎患者の症状予防のために、花粉ブロッククリームは有効かつ安全かを調べる。
(厳密にいうと、この研究はワセリンそのものではなくワセリンを主体とするクリームの研究です)
方法:
デザイン:
無作為化プラセボ対照二重盲検クロスオーバー試験
1日目:試験組み入れの評価
2〜5日目:第1期 1日4回 試験薬を鼻の入り口に塗布
5日目:第1期の評価(鼻粘膜誘発試験)
<1日のウォッシュアウト期間>
6〜9日目:第2期 第1期とは反対の試験薬を使用
9日目:第2期の評価(鼻粘膜誘発試験)
対象:
18〜55歳の91名の患者(ドイツの2施設、ロシアの1施設)
季節性あるいは通年性アレルギー性鼻炎の既往があり、症状が2年
以上続いていて、皮膚テスト陽性を確認した患者
実薬:
花粉ブロッククリーム(Alergol®:ワセリンベースで精製長鎖炭化水素を含む)
偽薬:
カルボキシメチルセルロースを含むゲル
評価法:
・鼻粘膜誘発試験
German Society for Allergology and Clinical Immunology
のポジションペーパーに従って、皮膚テストで最も高い反応を示した
アレルゲンをフェイスマスクを用いて鼻腔に投与した。
→鼻腔通気度計で鼻腔の気流が40%以下に減少するか、
症状スコアが3以上になった場合を陽性とした。
★利益相反:この研究はAlergol®を販売している会社から資金提供を受けている。
結果:
- 対象患者91名のうち、皮膚テストで最も高い反応を示したアレルゲンは、16名が動物の皮屑、25名がハウスダスト、50名が花粉であった。
- 試験前の皮膚テストの反応性や抗原暴露後の症状スコア・鼻腔通気度に、治療群間で有意な差は認めなかった。
- 症状スコアの中央値は、実薬群では4から1まで改善し(p<0.001)、偽薬群では4から3まで改善した(p<0.05)。2回目の鼻粘膜誘発試験時の実薬群と偽薬群とのスコアの差は有意に実薬の方が改善した(p<0.001)。
- 2回目の鼻粘膜誘発試験後の鼻腔通気度検査では、実薬では投与前とくらべて20%気流が増加したが、偽薬では10%の増加にとどまった。
- 有害事象は認められなかった。
結論:
花粉ブロッククリームは、偽薬に比べて、抗原暴露時の症状スコアや鼻腔通気を有意に改善させた。