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★二日酔いの頭痛にロキソニンは効く?医師229人が参加した無作為化比較試験が示したこと

二日酔いの翌朝、あなたはどう対処していますか?

 飲み会の翌朝、ズキズキする頭痛、だるさ、吐き気……。

 二日酔いは仕事のパフォーマンスを下げ、場合によっては医療機関を受診するきっかけにもなります。海外の調査では、飲酒による仕事の効率低下や欠勤により、従業員一人あたり年間約2,000ドル(約30万円)もの経済的損失が生じているという報告もあります。

 そんな二日酔いの症状を和らげるために、市販の鎮痛薬を飲んだことがある方は多いのではないでしょうか。特によく使われるのが、ロキソプロフェン(代表的な製品名:ロキソニン)です。じつは、日本の医師を対象にしたアンケート調査では、2,739人の回答者のうち約17%が「自分が二日酔いになったときにロキソプロフェンなどのNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)を飲む」と答えていました。

 しかし、その効果は「経験的に知っていた」だけで、きちんとした臨床試験で検証されてはいませんでした。

なぜロキソプロフェンが二日酔いに使われるのか

 ロキソプロフェンは、シクロオキシゲナーゼという酵素の働きを抑えることでプロスタグランジンという炎症物質の産生を減らし、痛みや炎症を和らげます。二日酔いとの関連で言えば、アルコールが体内で分解されるときに生じるアセトアルデヒドなどの代謝物が炎症を引き起こし、それが二日酔いの症状(特に頭痛)に関係していると考えられています。

 二日酔いのメカニズムはまだ完全には解明されておらず、アルコール自体の代謝、フリーラジカルによる酸化的ダメージ、炎症など複数の経路が関わっていると言われています。

 ロキソプロフェンは炎症経路に働きかけるため、少なくともその一部の症状には効くかもしれない、というのが研究者たちの仮説でした。

医師229人が参加した全国規模の二重盲検試験

 2017〜2018年、日本臨床研究学会が主導した「Hangovercome Study」と呼ばれる試験が実施されました。Facebook・Twitter・Yahoo! JAPANなどを通じて参加者を募集し、日本全国の医師229人が登録しました。その後、実際に二日酔いを経験した150人(ロキソプロフェン群74人、プラセボ群76人)が最終解析の対象となりました。

 試験の設計は厳密なもので、参加者も研究者もどちらの薬を飲んだかわからない「二重盲検」方式を採用しました。ロキソプロフェン60mgまたは偽薬(プラセボ)を二日酔いになったときに1錠飲み、3時間後の症状を視覚的評価スケール(VAS、0〜100mmの物差しで自覚症状の強さを測る方法)で評価しました。主要な評価項目は「全身の倦怠感」の改善度、副次的な評価項目は「頭痛」「吐き気」の改善度と副作用の発生率でした。

 参加者の平均年齢は34歳、92%が男性でした。試験開始前の時点では、両群の症状の程度に差はなく、公平な比較が行われています。

頭痛には有効、だるさと吐き気には効果なし

 結果は次のとおりでした。

  • 頭痛の改善:ロキソプロフェン群の改善スコアの中央値は25ポイントだったのに対し、プラセボ群は10ポイントで、ロキソプロフェン群が統計的に有意に優れていました(調整後の差14ポイント、95%信頼区間8〜21、p<0.001)。
  • 全身倦怠感の改善:ロキソプロフェン群24ポイント vs プラセボ群19ポイントで、統計的な有意差はありませんでした(p=0.07)。
  • 吐き気の改善:両群間に差はありませんでした(p=0.68)。
  • 副作用:胃部不快感(ロキソプロフェン群で2.7%)など軽微なものにとどまり、両群間に有意差はありませんでした(p=0.25)。

 つまり、ロキソプロフェンは二日酔いの頭痛を和らげる効果があることが示されましたが、だるさや吐き気には有効ではありませんでした。「二日酔い全般に効く万能薬」ではなく、「二日酔い頭痛の鎮痛薬」として位置づけるのが適切と言えます。

 これは、二日酔いのメカニズムが炎症だけでなく複数あることと一致しています。倦怠感や吐き気にはアルコール代謝そのものや酸化的ダメージなども関わっており、抗炎症薬だけでは対処しきれないと考えられます。

まとめ

 二日酔いの頭痛にロキソプロフェン(ロキソニン)が有効であることが、日本全国の医師229人が参加した無作為化比較試験によって示されました。だるさや吐き気への効果は確認されませんでしたが、頭痛に限れば科学的根拠のある選択肢と言えます。もちろん、空腹時の服用は胃への負担があるため注意が必要です。また、この結果は飲酒を推奨するものではありません。

今回参考にした論文は、
Hara M, et al. A nationwide randomized, double-blind, placebo-controlled physicians’ trial of loxoprofen for the treatment of fatigue, headache, and nausea after hangovers. Alcohol. 2020;84:21-25.
doi:10.1016/j.alcohol.2019.10.006
です。

Research Question:

 二日酔い後の倦怠感・頭痛・吐き気に対して、ロキソプロフェンナトリウム60mgの単回経口投与はプラセボと比較して有効か

Methods:

  • デザイン: 全国規模・無作為化・二重盲検・プラセボ対照試験(UMIN000028441)
  • サンプル: n=150(ロキソプロフェン群74人、プラセボ群76人、中央値年齢34歳、男性92.0%、日本人医師)
  • 主要アウトカム: 服薬前後3時間のVAS倦怠感スコアの変化量
  • 解析: 線形回帰モデル(説明変数:治療群・性別・ベースラインVAS)、副次エンドポイントはBonferroni補正(有意水準α=0.017)

Results:

  • 主要結果(倦怠感): 中央値の改善量 24 vs 19ポイント、調整後差6(95%CI −0.49〜13)、p=0.07(有意差なし)
  • 副次結果(頭痛): 25 vs 10ポイント、調整後差14(95%CI 8〜21)、p<0.001(有意に改善)
  • 副次結果(吐き気): 7 vs 10ポイント、調整後差−1(95%CI −6〜4)、p=0.68(有意差なし)
  • 有害事象: 両群同等(胃部不快感2.7% vs 胃痛2.6%+歯のぐらつき感1.3%、p=0.25)

Conclusion & Implication:

  • 著者結論:ロキソプロフェンナトリウムは二日酔い後の頭痛緩和に有効であったが、全身倦怠感・吐き気は改善しなかった。
  • 臨床応用ポイント:二日酔い頭痛に対するNSAIDs使用は、既に医師の17.1%が経験的に実践していたが、本試験がその有効性を初めてRCTで裏付けた。一方、倦怠感・吐き気への効果は示されておらず、症状に応じた使い分けが重要。女性での検討・用量の検討(60mg以外)・評価時点の検討(1〜2時間後)など残課題あり。

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