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風邪をこじらせたら副鼻腔炎かもしれない!症状と対策を専門医が解説

 普通の風邪だと思っていたのに、なかなか良くならない。頭が重く、顔の痛みも気になる…。そんな症状でお悩みの方は、もしかすると副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)かもしれません。

 今回は、風邪から発展しやすい急性副鼻腔炎について、症状や対処法を詳しく解説します。

(注) 専門的には「鼻副鼻腔炎(びふくびくうえん)」と言いましょう、ということになっていますが、この文章では一般の方になじみの深い「副鼻腔炎」と記載しています。

急性副鼻腔炎とは?

 急性副鼻腔炎は、鼻の粘膜にとどまらず鼻の周りにある空洞(副鼻腔)が炎症を起こす病気です。厚生労働省の平成29年患者調査によると、急性副鼻腔炎の年間推計総患者数は20万人とされています。多くの場合、風邪がきっかけとなって発症します。

なぜ風邪から副鼻腔炎になるの?

 急性副鼻腔炎は、多くの場合ウイルス感染をきっかけとした二次的な細菌感染で発症します。 つまり、最初にウイルスが鼻や副鼻腔に感染し、その後に細菌が感染することで炎症が起こります。

  • 例えば、風邪などの上気道感染症にかかると、鼻や副鼻腔の粘膜がウイルスによって炎症を起こし、腫れてしまいます。
  • この腫れによって、副鼻腔の自然口と呼ばれる出入り口が狭くなったり閉塞したりして、副鼻腔の換気が悪くなります。
  • さらに、粘膜の腫れによって、鼻や副鼻腔内の粘液線毛輸送機能も低下します(この機能は、線毛の運動によって、鼻汁や異物を体外へ排出する役割を担っています)。
  • その結果、副鼻腔内に鼻汁が貯留し、細菌が繁殖しやすい環境が作られます。

 このように、ウイルス感染によって鼻や副鼻腔の防御機能が低下したところに、細菌が感染することで急性副鼻腔炎が発症します。

 急性副鼻腔炎で検出される主な細菌は、肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリスという菌です。

 これらの細菌は、健康な人の鼻や副鼻腔にも存在していますが、普段は免疫の力によって抑えられています。しかし、ウイルス感染によって免疫の働きが低下すると、これらの細菌が異常増殖して炎症を引き起こします。

風邪との違いは?主な症状

 急性副鼻腔炎の特徴的な症状は、後鼻漏、頭痛、顔面の痛みの3つが代表的です。

  • 後鼻漏(こうびろう)は多くの患者さんが経験する症状です。のどの奥に粘液が流れ落ちる不快な感覚が特徴で、特に朝起きた時に強く感じられます。この症状により慢性的な咳が続くこともあります。
  • 頭痛については、前頭部(おでこ)に重い痛みを感じるのが特徴です。この痛みは体を前に倒したときに増強する傾向があり、朝方に症状が強くなることが多いです。通常の風邪による頭痛とは異なり、より局所的で持続的な痛みとして感じられます。
  • 顔面の痛みも見逃せない症状です。特にほっぺたの辺りに強い痛みや圧迫感を感じることが多く、時には上の歯が痛く感じられたり、目の周りに違和感を覚えたりすることもあります。これは副鼻腔の炎症が周囲の神経を刺激することで起こる症状です。

要注意!慢性化のサイン

 急性副鼻腔炎は適切な治療を行えば10日から2週間程度で改善することが多い病気です。

 しかし、症状が12週(約3ヶ月)以上続く場合や、一度改善しても繰り返し再発する場合は、慢性副鼻腔炎になってしまっているかもしれません。

 市販薬を内服したり、病院での最初の治療を行っても改善しない場合には、耳鼻咽喉科への受診をお勧めします。慢性化を防ぐためには、早期発見と適切な治療が重要です。

自宅でできるセルフケア

 自宅での対処法として、効果的なのが蒸気吸入です。お風呂での深い呼吸をしたり、蒸しタオルを顔にあてて蒸気で温めるなども効果的です。これらの方法により、鼻の中の粘液を柔らかくし、自然な排出を促すことができます。

 鼻洗浄も有効な対処法の一つです。ドラッグストアに行くと鼻に入れても染みない洗浄液(生理食塩水)を作れるキットが売っていますので、それを使用して優しく鼻腔内を洗い流すことで、粘液や細菌を取り除くことができます。ただし、強い圧力をかけすぎないよう注意が必要です。

病院を受診すべきタイミング

 症状が1週間以上改善しない場合や、38度以上の発熱が続く場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診することをお勧めします。

 特に激しい頭痛がある場合や、目の周りが腫れている視力に異常を感じるといった症状がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。これらの症状があると副鼻腔炎が重症化している可能性があります。適切な診断と治療を受けることで、症状の悪化や合併症を防ぐことができます。

予防法と生活習慣の改善

 予防の基本は、日々の健康管理にあります。こまめな手洗い・うがいの習慣化、適切なマスクの着用、十分な睡眠時間の確保、そしてバランスの取れた食事を心がけることが大切です。

 環境面での対策も重要です。室内の温度と湿度を適切に保ち、定期的な換気を行うことで、副鼻腔炎の発症リスクを下げることができます。寝具の清潔さを保つことも、予防には効果的です。

 さらに、身体の防御機能を高めることも副鼻腔炎の予防に重要な役割を果たします。日々のストレス管理を心がけ、適度な運動を継続的に行うことをお勧めします。

まとめ

 風邪をこじらせたと感じたら、副鼻腔炎の可能性も考えて早めの対処を心がけましょう。特に後鼻漏やほっぺたの痛み、持続する頭痛がある場合は要注意です。
 自己判断での市販薬の長期使用は避け、症状が改善しない場合は必ず耳鼻咽喉科を受診してください。適切な治療と生活習慣の改善により、副鼻腔炎の早期改善と慢性化予防ができます。

【参考文献】

  1. 厚生労働省:平成29年患者調査
  2. 鼻副鼻腔炎診療の手引き(鼻副鼻腔炎診療の手引き作成委員会. 日鼻誌. 63 (1) 別冊 p.1-85: 2024)
  3. Sinus Infection Basics (CDC).

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