鼻づまりや副鼻腔炎、もしかして「体重」と関係ある?
「いつも鼻がつまっている」「副鼻腔炎が治りにくい」。そんな悩みを抱えていませんか?
実は、こうした慢性的な鼻の不調と、体重が関係しているかもしれない──そんな驚きの研究結果が発表されました。

今回ご紹介するのは、「肥満手術(バリャトリック手術)を受けた人は、慢性副鼻腔炎の発症率が下がる」という米国の大規模研究。
ダイエットが鼻の通りをよくするなんて、信じられますか?
肥満と炎症は密接な関係にある
私たちの体は、体重が増えると脂肪組織からさまざまな炎症物質が分泌され、体のあちこちに慢性炎症を引き起こすことが知られています。
これが関節痛や糖尿病、心疾患の原因になることはよく知られていますが、実は「鼻の奥」にも影響しているのです。副鼻腔とは、鼻の周囲にある空洞のことで、そこが炎症を起こすと「慢性副鼻腔炎」となり、鼻づまりや頭痛、嗅覚障害などが続きます。
最新の研究では、肥満があると副鼻腔炎のリスクが1.3倍ほど高まるというデータもあり、逆に体重が減れば副鼻腔の調子も良くなる可能性が指摘されていました。
アメリカ1700万人のデータから見えた驚きの事実
今回紹介する研究は、米国の医療データベースを用いて、約1700万人の成人を対象に分析を行ったものです。
研究チームは、その中から「肥満手術(胃の縮小手術など)」を受けた人たち約5万3千人と、手術を受けていない同程度の体格・年齢の人たちを比較しました。
その結果、手術を受けた人たちは、
- 手術後2年で副鼻腔炎になるリスクが21%減少
- 手術後10年では27%減少
- さらに、副鼻腔手術が必要になる確率も半分以下に!
つまり、大幅な減量によって、鼻の慢性的な炎症を防ぐことができる可能性があると分かったのです。
鼻の不調には「体重コントロール」も大事
今回の研究は、「肥満そのものが慢性副鼻腔炎のリスク因子」であること、そして「体重を減らすことでそのリスクを下げられる」可能性を世界で初めて大規模に証明した点で大きな意義があります。
もちろん、全ての人が肥満手術を受ける必要はありませんが、鼻の不調がなかなか治らない人は、医師に相談しつつ、食事や運動による健康的な減量も一つの手段かもしれません。
鼻づまりが「体の炎症のサイン」だとすれば、体重管理は単なる見た目だけでなく、健康の根本に関わる行動だといえるでしょう。

まとめ
慢性副鼻腔炎と肥満の意外なつながりが、最新研究で明らかになりました。体重を減らすことで、鼻の不調も改善できる可能性があるのです。
※本記事は最新研究を分かりやすく解説したものであり、診断・治療は専門医へご相談ください。

今回参考にした論文は、
Thatte S, et al. Bariatric Surgery Lowers Incidence of Chronic Rhinosinusitis and Functional Endoscopic Sinus Surgery. Laryngoscope. 2025 May 10.
doi:10.1002/lary.32265.
です。
Research Question:
肥満手術は、慢性副鼻腔炎 (CRS) および内視鏡下鼻副鼻腔手術 (FESS) 施行率の低下に寄与するか?
Methods:
デザイン:
後向きコホート研究(EHRデータベース)
サンプル:
n=17,852,643(米国, 成人)
主要アウトカム:
CRS新規診断率、FESS施行率
解析:
1:1マッチング(BMI、年齢、性別、喫煙歴、喘息、鼻炎など)後の累積発症率比較(生存分析)
Results:
- 肥満手術群ではCRS発症リスクが2年で21%、5年で21%、10年で27%減少(全てp<0.001)
- FESS施行率も同様に低下(2年HR=0.52, 10年HR=0.50)
- 結果はBMI群別(30-35, >35)で一貫していた
Conclusion & Implication:
- 肥満手術はCRSの一次予防・重症化予防の可能性がある
- 肥満CRS患者では体重管理の啓発が推奨される






