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★鼻とのどの交差点〜慢性上咽頭炎について

 鼻やのどの不調が長引くと、大変ストレスになりますよね。

 特に冬場は、鼻はぐずぐずするし、のどはイガイガするし、痰が奥にからんだ感じがしてスッキリしません。病院を受診して診てもらっても、「鼻水もあまり出ていませんね。のどもきれいです」と言われて、何ともないですということで終わってしまう場合もあります。

 そんな場合、上咽頭に原因があるかもしれません。

上咽頭とはどんなところ?

 上咽頭とはその名の通り、咽頭(のど)の上側にあります。咽頭は上咽頭、中咽頭、下咽頭と3つに分かれています。だんご3兄弟みたいですね(違うか?)。

 患者さんに「のどの上の方」と説明しても、なかなかイメージしてもらえないことがあります。それは、上咽頭は口をあーんと開けても見えないところだからです。

 上咽頭はのどちんこ(軟口蓋・口蓋垂)の裏側に隠れています。「鼻の突き当たり」と言った方がイメージしやすいかもしれません。

 ちょうど、上咽頭は鼻とのどの交差点なのです。

慢性上咽頭炎とは?

 この上咽頭に炎症が起こると、いろいろな症状が出ます。後鼻漏といって、鼻水がのどに垂れてくるような感じがしたり、のどがイガイガしたり、鼻やのどの奥に痰がつまっているような感じがしたりします。

 急に起きた場合(急性)には、抗菌薬などの内服が効果があることが多いですが、慢性的に炎症が続くことがあります。これが慢性上咽頭炎です。

 なぜこんな場所に炎症が起きるのでしょうか。

 一番の原因は口呼吸と言われています。皆さん、このブログを読んでいる今、口を開けてはいませんか?

 本来は口を閉じて鼻呼吸するのが正しい呼吸です。イヌもサルもみな基本は鼻呼吸です(イヌが舌を出してハーハーいっているのは、唾液を蒸発させて体温を下げようとしている特殊な時だけです)。

 しかし、二足方向ができるようになり言葉をしゃべられるようになった私たちは、口からも鼻からも容易に呼吸できるようになりました。しゃべられるようになったのは良いことですが、一方で不具合も出てきました。

 口呼吸をしていると、外からのホコリや細菌・ウイルス、冷たい空気が直接のどの中に入ってきますので、それが原因で慢性的な炎症を起こしてしまうのです。

 鼻から呼吸をすれば、それらの外界からの刺激を鼻でフィルターできるので、よい呼吸ができるのです。

 口呼吸をしているなと思われる方は、ぜひ口を閉じるように心がけて下さい。

 全集中、鼻の呼吸!です。

慢性上咽頭炎の治療法

 慢性上咽頭炎の治療として上咽頭擦過治療(EAT)があります。Bスポット療法とも言われています。

 当院でも行っており、このたび当院のホームページに詳細を掲載しましたので、是非ごらん下さい。↓

 下に示した論文は、日本のある施設でのEATをまとめたものです。

 後鼻漏や咽頭痛、のどの違和感の症状が多く、EATを6〜9カ月行うことで、およそ7割の患者さんで症状が改善し、粘膜の状態も改善していることが報告されています。

 慢性上咽頭炎に対するEATは、古くからある治療ですが、最近また見直されてきている治療法です。科学的なエビデンスはまだ多くないように思いますが、これからも発展が期待される治療だと思っています。

 このような症状でお困りの方はぜひご相談ください。下のリンクにはEATを行っている医療機関の一覧が掲載されています。

 

今回参考にした論文は、
Mogitate M, et al. Outcome of an outpatient specialty clinic for chronic epipharyngitis. Auris Nasus Larynx. 2021; 48(3): 451-456.
doi: 10.1016/j.anl.2020.09.019.
です。

Research Question:

 慢性上咽頭炎の症状や内視鏡所見を調査する。

方法:

 デザイン:
  後ろ向き観察研究
 観察機関:
  2016年11月から2017年10月まで
 対象:
  上咽頭擦過療法(EAT)を専門に行っている外来を受診した患者
 診断:
  帯域制限光(NBI)内視鏡を用いて上咽頭を観察した。

結果:

  • 212人の患者のうち、NBI内視鏡検査を行えたのは102名であった(男性32人、女性70人)。
  • 平均年齢は46.0歳(範囲:22~83歳)であった。
  • 患者の症状は、多い順に後鼻漏(42人)、咽頭痛(12人)、咽頭違和感(11人)であった。
  • 最後まで治療を継続しえた患者は74例であり、その治療効果は、完治 48.6%、著明改善 21.6%改善 16.2%、変化なし 13.5%であった。
  • NBI内視鏡所見について
    • 認められた所見は、黒斑(73%)、肉芽様変化(76%)、血管像の消失(92%)、痂皮・粘液付着(54%)、アデノイド肥大(31%)、扁桃嚢胞(7%)などであった。
    • 特徴的な粘膜所見は、アイボリー色の粘膜(48%)、緑色の血管網(72%)、暗赤色から赤褐色の粘膜(89%)を呈していた。
    • 6~9ヶ月間のEATにより、86%の患者で内視鏡所見が消失し、症状が改善した。

結論:

 NBI内視鏡検査は、慢性上咽頭炎の診断・管理に有用である。

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