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★ラーメン週3回以上で死亡リスク増?ラーメン王国山形での研究が警鐘

なぜ今、ラーメンと健康の関係が注目されているのか?

 日本人の国民食とも言えるラーメン。「週に何回くらい食べている?」と聞かれて、ドキッとした方もいるのではないでしょうか。

 実は最近、ラーメン消費額3年連続日本一を達成した山形市の山形大学研究チームが、気になる調査結果を発表しました。

 それは「ラーメンを頻繁に食べると、特定の人で死亡リスクが高くなる可能性がある」というものです。

 2024年の山形市の消費額は2万2389円と、2位を大きく引き離すほどのラーメン愛好地域での研究だけに注目が集まります。美味しくて手軽なラーメンですが、本当に健康への影響はあるのでしょうか?

 今回は、この最新研究の内容を分かりやすく解説していきます。

日本人のラーメン消費と塩分問題の現状

 ラーメンが健康に与える影響について考える前に、まず日本人のラーメン消費の現状を知っておきましょう。

 総務省の家計調査によると、山形市が2024年に1世帯あたり2万2389円という過去最高額でラーメン消費額日本一を3年連続で獲得しており、また日本の一般家庭におけるラーメンの支出額は、そばやうどんなど他の麺類を上回っています。

 つまり、私たちは思っている以上にラーメンを日常的に食べているのです。

 しかし、ラーメンには気になる点があります。それは「塩分の多さ」です。ラーメン一杯には、麺とスープを合わせて多量の塩分が含まれています。厚生労働省が推奨する一日の塩分摂取量は、男性で7.5グラム未満、女性で6.5グラム未満とされていますが、2023年の国民健康・栄養調査では、日本人の平均塩分摂取量は9.8グラム(男性10.7グラム、女性9.1グラム)と、目標値を大きく上回っています。

 塩分の取りすぎは、脳卒中胃がんなどの病気のリスクを高めることが知られています。そこでこの論文の著者は「個人レベルでのラーメン摂取と健康への影響」について、詳しく調べる必要があると考えたのです。

6,000人以上を4年半追跡した大規模研究の内容

 今回の研究は、山形大学医学部の研究チームが行った大規模な調査で、山形県在住の40歳以上の男女6,725人(男性2,349人、女性4,376人)を対象に実施されました。参加者には過去1年間のラーメン摂取頻度についてアンケート調査を行い、その後約4.5年間にわたって健康状態を追跡しました。

 研究では、ラーメンの摂取頻度を4つのグループに分類しました:①月1回未満(18.9%)、②月1-3回(46.7%)、③週1-2回(27.0%)、④週3回以上(7.4%)です。興味深いことに、山形県民の約半数が月に1-3回ラーメンを食べており、週1回以上食べる人も全体の3分の1を占めていることが分かりました。

 追跡期間中に145人の方が亡くなりましたが、その内訳はがんによるものが100人、心血管系の病気によるものが29人でした。

 研究者たちは、ラーメンの摂取頻度と死亡リスクとの関係を詳しく分析し、年齢、性別、喫煙、飲酒、スープの摂取量、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの様々な要因を考慮して統計解析を行いました。

驚きの研究結果:特定のグループで死亡リスクが2倍以上に

 研究の結果、全体では週3回以上ラーメンを食べるグループで死亡リスクが1.52倍高くなる傾向が見られましたが、統計学的に明確な関連とは言えませんでした(週1-2回食べる人との比較)。しかし、詳しく分析すると、特定のグループでは明らかなリスクの上昇が確認されました。

 最も注目すべきは以下の結果です(週1-2回食べる人との比較):

  1. 男性では週3回以上の摂取で死亡リスクが上昇傾向
  2. 70歳未満では週3回以上で死亡リスクが2.20倍に有意に増加
  3. お酒を飲む人では週3回以上摂取すると死亡リスクが2.71倍に有意に増加
  4. スープを多量摂取する人では複雑なパターンを示し、ラーメンをほとんど食べない人(月1回未満)で死亡リスクが2.43倍に増加
    (注:これは元々高血圧や糖尿病などの持病がある人[=リスクの高い人]が医師からラーメンの摂取制限を指導されたために関連があるように見えた可能性があります)

 これらの結果から、私たちの生活に活かせるポイントをまとめると:まず、ラーメンはせいぜい週1-2回程度までに留める。特に男性や70歳未満の方、お酒を飲む習慣のある方は要注意です。また、特にお酒を飲む人は、ラーメンの頻度を控えめにすることが重要でしょう。ただし、この結果の解釈は複雑で、さらなる研究が必要です。

 ここで注意をしておく必要があるのは、この調査は他の食物摂取の状況や運動習慣などの関係ありそうな背景を調査していないため、これらの見えない因子が結果に影響している可能性があるということです。

 完全に禁止する必要はありませんが、「ラーメンは特別な日のお楽しみ」として位置づけ、バランスの取れた食生活の中で楽しむことが重要です。

まとめ:賢いラーメンとの付き合い方

 今回の山形大学の研究で、ラーメンの頻繁な摂取が特定の人では健康リスクを高める可能性が示されました。
 大切なのは「適度な楽しみ方」です。せいぜい週1-2回程度を目安に、お酒との組み合わせに注意して、バランスの取れた食生活を心がけましょう。
 美味しいラーメンを長く楽しむためにも、賢い付き合い方を身につけることが重要です。

今回参考にした論文は、
Suzuki M, et al. Frequent Ramen consumption and increased mortality risk in specific subgroups: A Yamagata cohort study. J Nutr Health Aging. 2025;29(10):100643.
DOI: 10.1016/j.jnha.2025.100643
です。

Research Question:

 山形県在住者におけるラーメン摂取頻度と全死亡率の関連性を検討した

Methods:

 デザイン:
  前向きコホート研究(Yamagata Cohort Study)
 サンプル:
  n=6,725(山形県, 40歳以上, 男性2,349人・女性4,376人)
 主要アウトカム:
  全死亡(追跡期間中央値4.5年)
 解析:
  Cox比例ハザードモデル;年齢、性別、喫煙、飲酒、スープ摂取量、糖尿病、高血圧、脂質異常症で調整

Results:

  • 主要結果(全体):
    • 週3回以上 vs 週1-2回: HR = 1.52 [95%CI 0.84–2.75], p = 0.163
  • 週3回以上摂取群のサブグループ解析:
    • 70歳未満: HR = 2.20 [1.03–4.73], p = 0.043
    • 飲酒者: HR = 2.71 [1.33–5.56], p = 0.006
    • 男性: HR = 1.74 [0.83–3.65], p = 0.140
  • 月1回未満摂取群での特異的所見:
    • スープ≥50%摂取者: HR = 2.43 [1.20–4.92], p = 0.014

Conclusion & Implication:

  • 著者結論:日本人地域住民において、特定のサブグループ(男性、70歳未満、飲酒者)でラーメン高頻度摂取が死亡リスク増加と関連。スープ多量摂取では複雑なパターンを示す
  • 臨床応用ポイント:個別化された食事指導の重要性。特に飲酒+大量スープ摂取の組み合わせへの注意喚起。既存疾患による極端な制限の問題も考慮すべき
  • Limitation:観察研究のため因果関係は不明。食事データは自己申告であり横断的調査であり、ラーメンの量や他の食品摂取・運動習慣は未調整。サブグループ解析は多重比較補正なし。総エネルギー摂取量等の重要な交絡因子で調整できておらず、残余交絡の可能性あり。

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