★で始まるブログは一部医療従事者向けの内容を含みます。詳しくは「このサイトについて」をごらんください。

★学校健診で子どもの約5人に1人に異常が見つかる——視力・聴力・脊柱側弯症を早期発見することの大切さ

子どもの健診、しっかり受けさせていますか?

 毎年学校で行われる健康診断。視力検査や聴力検査は当たり前のように受けているかもしれませんが、「実際にどれくらいの子どもに問題が見つかっているの?」と考えたことはあるでしょうか。

 子どものころから放置された視力・聴力の問題は、学習の遅れや心の発達に影響することがあります。脊柱側弯症(背骨の曲がり)や偏平足のような体の問題も、早く見つけて対処すれば保存的な治療で十分なケースがほとんどです。

 今回ご紹介する研究は、学校健診がどれほど重要な役割を果たしているかを、8,400人超の大規模データで報告したものです。

なぜ学校健診は大切なのか

 子どもの視力・聴力の問題や骨格の異常は、自覚症状がないまま進行することが珍しくありません。

 視力の問題では、近視・遠視・乱視などの屈折異常が代表的です。特に近視は世界的に増加しており、デジタル機器の使用時間の増加と関連していると考えられています。放置すれば学力低下だけでなく、将来的に網膜剥離や緑内障のリスクが高まることもあります。

 聴力の問題では、子どもに多い中耳炎(滲出性中耳炎)が原因となる伝音難聴がほとんどです。適切な治療を受ければ改善が見込めますが、発見が遅れると言語の発達や学習に影響が出ることがあります。

 脊柱側弯症は成長期に進行しやすく、10歳以降の思春期に多く見られます。早期に発見してコルセット(装具)を使えば、手術が必要になるほど悪化するのを防げる可能性があります。

 偏平足は多くの場合は日常生活に支障をきたしませんが、一部では痛みや歩行の問題につながることがあり、早めの対処が役立ちます。

 こうした問題は、子ども自身が気づいて訴えることが少なく、家族や先生も見逃しやすいものです。だからこそ、集団で実施される学校健診の「スクリーニング(ふるい分け)」の役割が重要です。

8,400人超を対象にした学校健診の実態——トルコからの報告

 今回ご紹介するのは、2026年に医学誌『Medicine』に掲載された研究です。トルコのバットマン州で2022〜2023学年度に実施された学校健診プログラムを分析したもので、6〜17歳の児童・生徒8,433人が対象となりました。

 検査内容は以下の4項目です:

  • 視力:スネレン視力表を使った目の検査(片目ずつ)
  • 聴力:耳鏡検査のあと、500〜4,000Hzの純音聴力検査(20デシベルで反応を確認)
  • 偏平足:体重をかけた状態での足のアーチの崩れを確認
  • 脊柱側弯症:アダムス前屈テスト(前屈みになったときの背中の左右差を確認)

 検査で引っかかった子どもは、それぞれの専門外来(眼科・耳鼻科/聴覚外来・整形外科)に紹介され、確定診断と治療が行われました。研究チームはその結果を集計・分析しました。

結果:子どもの約5人に1人に何らかの異常が見つかった

 8,433人中1,876人(22.3%)に、少なくとも1つの異常所見が確認されました。つまり、約5人に1人の子どもに何らかの健康上の問題が見つかったことになります。143人(1.7%)は複数の項目に問題がありました。

 各項目の詳細は以下のとおりです。

視力(8.24% = 695人)

  • 近視が最多で58.3%、次いで乱視32.2%、遠視9.5%
  • 視力異常が確認された子どもの99.0%(688人)にメガネが処方された
  • 視力に問題のある子どもの38.7%に家族歴があり、遺伝的な要因も影響していることがわかった

聴力(3.65% = 308人)

  • 65.6%が片耳のみの難聴で、両耳難聴は34.4%
  • 難聴の89.9%は中耳由来の「伝音難聴」(主に中耳炎)で、87.7%に薬物療法や鼓膜換気チューブ留置が勧められた
  • 残りの10.1%は内耳・神経の問題による「感音難聴」で、90.3%に補聴器が適応された
  • 聴力に問題のあった子どもの41.2%に中耳炎の既往があった

偏平足(8.93% = 753人)

  • 92.7%は柔軟性のある偏平足(比較的問題になりにくいタイプ)
  • 94.6%は経過観察・運動指導・靴のアドバイスで対応し、5.4%に装具(インソール)が処方された

脊柱側弯症(1.42% = 120人)

  • アダムス前屈テストで120人が陽性となり、そのうち65.0%(78人)がX線検査でコブ角10度超の側弯症と確定診断された
  • 確定診断された78人のうち79.5%が女の子
  • 管理方法:経過観察37.2%、コルセット(装具)57.7%、手術検討5.1%(コブ角40度超)

 これらの結果から、学校健診は多くの子どもの「気づかれていなかった問題」を発見し、適切な治療につなげるうえで、実効的かつ費用対効果の高い手段であることが改めて示されました。

まとめ

 学校健診で8,400人超を調査した研究では、視力・聴力・偏平足・脊柱側弯症の4項目だけで約22%の子どもに異常が見つかることが報告されました。特に聴力検査は、子どもに多い中耳炎由来の難聴を早期に発見する重要な機会です。毎年の学校健診の結果を軽視せず、気になる所見があれば早めに専門医を受診することをおすすめします。

今回参考にした論文は、
Solmaz M, et al. School-based health screenings for early detection of pediatric sensory and musculoskeletal conditions: A cross-sectional study. Medicine (Baltimore). 2026;105(21):e48903.
doi:10.1097/MD.0000000000048903
です。

Research Question:

 標準化されたプロトコルを持つ集団学校健診プログラムにおいて、6〜17歳の学童の視力・聴力・偏平足・脊柱側弯症のスクリーニング陽性率・確定診断率・初期治療転帰はどうか?

Methods:

  • デザイン:横断的観察研究(後ろ向き)
  • サンプル:n=8,433(6〜17歳、トルコ バットマン州、2022〜2023学年度)
  • 主要アウトカム:各スクリーニング項目の陽性率・確定診断率・初期治療内容(眼鏡処方・換気チューブ・補聴器・装具・コルセット等)
  • 解析:記述統計(カテゴリ変数n(%)、連続変数mean±SD);群間比較はχ²検定;有意水準α=0.05;欠損値には完全ケース解析を使用

Results:

  • 全体:1,876/8,433(22.3%)に1項目以上の異常所見;143人(1.7%)が複数病変
  • 視力:695人(8.24%)——近視405例(58.3%)、乱視224例(32.2%)、遠視66例(9.5%);眼鏡処方率99.0%;家族歴38.7%
  • 聴力:308人(3.65%)——片側難聴65.6%、伝音難聴89.9%、感音難聴10.1%;中耳炎既往41.2%;伝音難聴の87.7%に内科的治療or換気チューブ;感音難聴の90.3%に補聴器
  • 偏平足:753人(8.93%)——柔軟性型92.7%;装具処方5.4%;保存的管理94.6%
  • 脊柱側弯症:120人(1.42%)Adams陽性→X線確定78人(65.0%、Cobb>10°);女性79.5%;装具治療57.7%、手術紹介5.1%(Cobb>40°)

Conclusion & Implication:

  • 著者結論:学校健診は実行可能かつ低コストであり、視力・聴力・偏平足・脊柱側弯症に対して臨床的に有意義な所見を検出し早期介入につなげられることが示された。標準化プロトコル・訓練されたチーム・明確な紹介経路が全国展開の鍵である。
  • 臨床応用ポイント:伝音難聴の大部分を占める滲出性中耳炎を学校健診で早期捕捉できる点は耳鼻咽喉科的に特に重要。今後の課題は感度・特異度・陽性予測値の評価、費用対効果分析、年齢・社会経済層別の層別解析。単一省(州)研究のため他地域への一般化には注意が必要。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)