今日は連休中ということで、いつもの耳鼻咽喉科の話ではなく、確率の話をしてみましょう。
有名な「モンティ・ホール問題」について紹介します。
この問題は、皆さんの直感と、実際に確率計算をした結果とが乖離しており、大変議論になったものです。
モンティ・ホール問題とは
モンティ・ホール(Monty Hall)はアメリカの司会者です。彼が司会を務めていた番組「Let’s make a deal」の中で行われたゲームがありました。
プレーヤーの前には、3つのドアがあって、1つのドアの後ろには景品の新車が、2つのドアの後ろには、はずれ(ヤギ)がいるというゲームで、新車のあるドアを開ければ、新車がもらえます。
ある時、新聞に次のような投稿がありました。
「プレーヤーが1つのドアを選択した後、司会のモンティが残りのドアのうち、ヤギがいるドアを開けてヤギを見せます(モンティは答えを知っている)。
ここでプレーヤーは、最初に選んだドアを、残っている開けられていないドアに変更してもよいと言われたら、プレーヤーはドアを変更すべきだろうか?」
それに対して、その新聞にコラムを連載しているマリリン・ボス・サヴァントが「正解は『ドアを変更する』である。なぜなら、ドアを変更した場合には景品を当てる確率が2倍になるからだ」と回答し、「そんなはずはない」と喧々囂々の大議論になりました。
あなたはどう思いますか?
少し問題を整理してみましょう(下の図)。
プレイヤーはAのドアを選びました。司会者のモンティ(答えを知っている)は必ずヤギのいるドアをあけます。モンティはCのドアを開けました。するとヤギがいました。
さあ、あなたは、ドアをAのままにしますか?Bに変えますか?という問題です。
実際に確率の計算を行うと、正解はマリリンの言うように、ドアを変更したほうがいいのです。Aに新車がある確率が1/3で、Bに新車がある確率が2/3になるのです。
でも多くの人は思うでしょう。
「ドアの向こうに新車がある確率はどのドアも一緒なんだから、今はCが候補から消えたんだから、AもBも1/2の確率で新車があるはずだ。だから変えなくてもいいんだよ」と。
これが直感と確率計算との乖離です。
中学生までの知識で解く方法:
プレイヤーがどの扉を選んでも起こることは同じなので(対称性)、プレイヤーはAを選んだとしましょう。
それぞれの扉の向こうに新車がある確率はそれぞれ1/3です。
下に示したように、それぞれの扉に新車がある場合で場合分けをして、モンティがヤギのいる扉をあける確率を計算していけば答えが出てきます(Bの場合とCの場合があります)。
結局、モンティがヤギのいる扉を開けた時点でのAに新車がある確率(事後確率といいます)は1/3になり、プレイヤーは別の扉に変えたほうが2倍確率が上がるということになります。
ベイズの定理を用いて解く方法:
ここからは数学や統計の得意な方向けです。苦手な方は読み飛ばしてください。(今回はベイズの定理の詳しい説明はしていません。式だけを示します)
各扉をA、B、Cとし、プレイヤーが選ぶドアをX、扉の向こうに新車があるドアをY、モンティが扉を開けるドアをZとします。
X, Y, Zの取り得る値はA, B, Cです。
するとこの問題はA, B, Cの対称性から、P(Y=B|X=A, Z=C)が、P(Y=A|X=A, Z=C)よりも大きいことを示せばよいことになります。
まとめ
ここまで読んでも、なんだか狐につつまれたような感じかもしれませんね。
直感も大事ですが、よくよく考えて物事を進めていくことも大事ですね。
参考文献:
入門 統計的因果推論(訳:落海 浩、朝倉書店)