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★耳が聞こえることは、認知症の予防になる!

 超高齢化社会になり、多くの人が長生きできる時代となりました。

 誰しも元気で長生きしたいと思っておられると思います。「元気で長生き」にもいろいろありますが、「認知症にならずに過ごしたい」というのも皆さんの大きな願いの一つなのではないかと思います。

認知症の危険因子は何か?

 世界的に有名なLancetという雑誌で発表された最新の報告によると、認知症の危険因子(リスクファクター)の中で、私達が何らかの介入(対処)ができるものとして12個の因子が挙げられています。

 その12個とは、教育不足、高血圧、聴覚障害、喫煙、肥満、うつ病、身体活動の低下、糖尿病、社会的接触の少なさ、過度の飲酒、頭部損傷、大気汚染です。

 2017年の同様の報告では、12個のうち前に書かれてある9個が挙げられていたのですが、今回の新しい報告では、過度の飲酒、頭部損傷、大気汚染の3つが加えられました。

 これらの12個の因子は、認知症発症の4割を担っているということが示されました。残りの6割は遺伝の要素など、私達が介入(対処)できない要素です。

 言い換えれば、私達の努力次第で、認知症発症の4割ほどは制御できる可能性があるということです。

危険因子の中で最も大きな要素は難聴

 これらの12個の因子の中で一番大きな要素をしめているのが難聴です。

 下に示した絵が論文に載っている図です。絵の左上が生まれたときで、くねくね曲がって右下が晩年をあらわしています。

 その道のりの途中で出てくる、緑や青や紫の丸が12個の因子をあらわしています。丸の大きさは認知症発症に与える影響の大きさをあらわしています。

 青の丸中年・壮年期における危険因子をあらわしていますが、その一番上に“Hearing loss”とあります。これが難聴です。この丸の大きさは12個のうちで一番大きく、8%と書かれています。


Read the full Lancet Dementia 2020 Commission: The Lancet: Dementia prevention, intervention, and care

難聴に対処をして、認知症の予防を!

 年をとれば、どうしても耳は聞こえづらくなってきます。これはどうにもしがたいのですが、その進み具合をゆっくりにすることはできます。

 以前、このブログにもそれに関連した内容を2、3個書きましたので、是非読んでみてください。

★タバコは難聴のリスクを高める | 耳鼻咽喉科医の独り言

タバコは、いろいろな病気の原因になっていたり、病気にかかるリスクを高めると言われています。肺癌やのどの癌などは有名ですが、心臓病や脳卒中など様々な病気で言われています。……

★太りすぎ、メタボは耳によくないの? | 耳鼻咽喉科医の独り言

肥満や メタボリック症候群 は、いろいろな病気のリスクを高めると言われています。   脳卒中や 心臓病など命に関わるような病気もあるため、健康のことを考えて、運動や食事に気をつけている方もいると思います。……

★血圧が高いと難聴になりやすいのか? | 耳鼻咽喉科医の独り言

普段何気なく音や声を聞いている耳ですが、聞こえにくくなると日常生活で様々な不都合が出てきます。 「最近、妻の言っていることが聞き取れなくて、ケンカばかりしています」「家族からテレビの音が大きいって言われるんです」  高齢になると耳が聞こえづらくなって、耳鼻咽喉科に来られる方が多くおられます。……

 そして、どうしても聞こえづらくなってしまった場合には、補聴器や人工内耳という方法があります。

「補聴器なんてめんどうくさい」とか「恥ずかしい」と思われる方も多いかもしれませんが、適切に使うことでよく聞こえるようになります。そして、それは認知症の予防にもなりますので、ぜひ耳鼻咽喉科で相談してみてください。

 

今回参考にした論文は、
Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2020 report of the Lancet Commission. Lancet. [Published on line July 30, 2020]
doi: 10.1016/S0140-6736(20)30367-6
です。

概要:

  • 認知症の3つの新しい介入可能な危険因子
    • 新たなエビデンスによると、3つの介入可能な危険因子(過度の飲酒、頭部損傷、大気汚染)が、2017年のLancet Commission on dementia prevention, intervention, and care life-course modelで挙げられた9つの因子(教育不足、高血圧、聴覚障害、喫煙、肥満、うつ病、身体活動の低下、糖尿病、社会的接触の少なさ)に追加された。
    • この12の危険因子に介入することで、認知症の40%まで防ぐことができるかもしれない。
  • 認知症の予防
    • 認知症のリスクとそれに対する予防は人生の早期から始まり、生涯を通じて継続するものであり、早すぎても遅すぎてもいけない。これらの行動には、公衆衛生的なプログラムと、個人に合わせた介入の両者が必要である。集団戦略に加えて、社会的健康、認知的健康、身体的健康、血管の健康を向上させるために、ハイリスクグループに対する施策を行うべきである。
  • 生涯にわたるリスク要因に対する具体的な行動
    • 40歳前後から中年期に、収縮期血圧130mmHg以下の維持を目指す(高血圧症の降圧治療は、認知症の予防に有効な唯一の薬として知られている)。
    • 難聴に対して補聴器の使用を奨励し、過度の騒音曝露から耳を保護することで難聴を軽減する。
    • 大気汚染副流煙を減らす。
    • 頭部の怪我を防ぐ。
    • アルコールの乱用や週21単位以上の飲酒は認知症のリスクを高めるため、アルコールを制限する。
    • 高齢になっても認知症のリスクを減らすことができるので、たばこを吸わないようにし、禁煙をサポートする。
    • すべての子どもたちに初等・中等教育を提供する。
    • 肥満や糖尿病に関連する状態を減らす。中年期以降の身体活動を維持する。
    • 生活習慣の介入により睡眠などの認知症の危険因子に対処することで、一般的な健康状態を改善することができる。
  • 不平等に取り組み、認知症の人を守る
    • 多くの危険因子は、特に黒人、アジア人、少数民族、および脆弱な集団で発生する不平等の周辺に存在する。これらの要因に対処するには、健康増進だけでなく、人々が生活する環境を改善するための社会的行動も必要である。例えば、身体活動が当たり前のように行われている環境を作ること、より良い栄養を摂取することにより加齢に伴う血圧上昇を減らすこと、潜在的な過度の騒音曝露を減らすことなどが挙げられる。
    • 認知症は、高所得国よりも低所得国・中所得国(LMIC)のほうが増加している。なぜなら、高齢化と介入可能な危険因子の頻度が高いためである。LMICにおいて予防的な介入をすることによって認知症を大きく減少させる可能性がある。
  • 認知症患者に対する推奨事項
    • 全人的な診断後ケアの提供
      認知症を診断した後は、身体的・精神的な健康、社会的なケア、支援に取り組むべきである。認知症の人の多くは他の病気を抱えており、健康管理に苦慮しているため、これらのケアによって入院を予防できる可能性がある。
    • 精神神経症状の管理
      多方面からの介入を行うことは、認知症の人の神経精神症状を減少させる一つの治療法となる。向精神薬は効果がないことが多く、重篤な副作用をもたらす可能性がある。
    • 家族介護者の介護
      家族介護者への具体的な介入は、うつ病や不安症状に対する長期的な効果があり、生活の質を向上させ、費用対効果が高く節約できる可能性がある。

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