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「これ飲んだら効くよ」のウソを見抜け!〜平均への回帰とは〜

 医療や健康に関する情報は巷にあふれかえっています。大変有用な情報もあれば、眉唾ものの情報もあり、どの情報を信じればいいのか迷う人は多いのではないでしょうか。

 もし、皆さんがこのような情報を見たときに、どう考えますか?

当社一押しの「アツサガール」を、10人の高血圧の方に投与したところ、
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 今日は、平均への回帰ということを題材にして、情報の適切なとらえ方についてお話ししたいと思います。

平均への回帰とは?

 平均への回帰とはどんなことでしょうか?

 平均への回帰とは、「ある試験結果について偏った成績(特別に良かったもしくは悪かった)の集団を対象として、2回目の試験結果を見ると、その集団の平均成績は1回目より2回目のほうが平均値に近づく」ことを言います(Wikipediaより抜粋・一部改変)。

 ここで試験結果とありますが、必ずしも試験だけではなく、測定結果や検査結果にも当てはまります。

 これだけではちょっとわかりづらいですね。もう少し具体例で説明してみましょう。

平均への回帰の具体例

①サンプルデータ:2回の英語の試験結果

 500人の生徒が同じくらいの難易度の英語の試験2回受けたとします。

 その結果をグラフにしたものが下の図です。これは、正規分布という標準的で理想的なばらつき具合になるような分布を用いて、ランダムにデータを作成した仮想データです。

 緑の破線は1回目の試験と2回目の試験の点数が同じ点を表しており、破線を境にその左上と右下に存在する点の数はほぼ同じになっています。また、1回目も2回目も難易度は同じ試験なので、平均点も点数のばらつきも一緒です。

 これを見ると、1回目に高得点だった人は、2回目も高得点になる傾向にありますが、中には2回目はうまくいかなくて点数が下がった人もあれば、うまくいって点数が上がった人もあるのがわかります。

 試験の点数や、何かの測定結果はこのようにばらつきますよね。

②1回目に高得点・低得点だった人だけ抜き出すと…

 では、このグラフから1回目の点数が70点以上の高得点の人と、50点以下の低得点の人だけを抜き出してみましょう。

 それが下のグラフです。

 高得点の人(グラフの右側の集団)を見てください。すると、緑の破線より右下に点が多いことが分かります。つまり、高得点の人達は2回目の試験では点数が下がる傾向にある(=平均点に近づく)ことがわかります。

 低得点の人(グラフの左側の集団)はその逆で、点数が上がる傾向にある(=平均点に近づく)ことがわかります。

 これが平均への回帰です。

③回帰直線を書いてみると…

 このことをもう少し別の表し方で見てみましょう。

 下のグラフの赤い線回帰直線といって、1回目の点数から2回目の点数を予測する直線です。

 この回帰直線が緑の破線よりも傾斜が緩やかになっているのがわかると思います。つまり、高い点数の人は2回目の点数は低くなる(平均点に近づく)傾向にあり、低い点数の人はその逆になるということを表しています。これが平均への回帰です。

 ここで気をつけていただきたいのは、1回目の試験も2回目の試験も、平均点は同じで、ばらつきも同じということです。それなのに、このような現象がみられるのです。

 また、この平均への回帰は時間的な前後は問わないので、2回目の点数から1回目の点数を予測しても同じような結果になります。

平均への回帰の他の例

 上記の例は、500人の試験点数でしたが、1人の人が複数回同じことをしたときの結果にも当てはまります。

 たとえば、プロボウラーを目指してコーチに付いてトレーニングをしている人がいて、その人の平均スコアが100点だとします。

 ある日、200点の高スコアを出したとします。コーチは褒めてくれるでしょう。ところが、翌日のスコアが110点に落ちてしまいました。この結果をみて「そうか、褒めて育てるのはいけないのだな」と思うかもしれません。

 今度は、調子が悪くて50点しかとれない日がありました。コーチは厳しく叱って指導しました。そうしたら、翌日のスコアが95点になりました。この結果をみて「そうだ、やっぱり叱って育てるのが最善の方法だ」と鬼コーチは勘違いするかもしれません。

 しかし、このいずれも平均への回帰が起きているに過ぎません。これらの結果から、「褒めて育てるよりも叱って育てるのが良い」と結論づけるのは間違いであることがわかります。

アツサガールの効果は?

 では、最初に出てきたアツサガールの効果について検討してみましょう。

「血圧の高い人に対してアツサガールを飲んでもらったら、血圧が下がりました」というのが売り文句でした。でもここまで読まれた皆さんは気づかれるのではないでしょうか。

 この売り文句だけからは、平均への回帰を見ているだけなのか、血圧を下げる実際の効果を見ているのかはわからないということですね。

 アツサガールが本当に血圧を下げるかどうかを知るには、プラセボ(偽薬)を内服した血圧の高い人たちの集団と比べて、比較検討しないとわかりません。

 アツサガールの広告のような情報を見たときには、それを鵜呑みにせず、一歩立ち止まって考える必要がありますね。

参考文献:

  1. 改訂版 日本統計学会公式認定 統計検定2級対応 統計学基礎/日本統計学会 編(東京図書)
  2. 意思決定のマネジメント/長瀬 勝彦 著(東洋経済新報社)

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