洋の東西を問わず、人々は自分が幸せになれるかどうかがとても気になるようです。そりゃそうですよね、不幸になりたい人はいませんからね。
そんなときに、みんなが気にするのが日の善し悪しです。
日本だと、「仏滅は日が悪い」とか、「友引には葬式しないほうがいい」とか言われます。
欧米だと「13日の金曜日は不吉」とされます。また、イタリアでは13日ではなく、「17日の金曜日が不吉」なのだそうです。
普遍性のない迷信
冷静に考えてみると、日本人にとっては仏滅、欧米だと13日の金曜日、イタリアでは17日の金曜日ということで、普遍性がありませんよね。
日本生まれのイタリア人は果たしてどうすればいいのでしょうか(^^;)
本当に日の善し悪しが影響を与えるのか。果たして手術の成績はどうか?
そんな疑問にまじめに答えた面白い医学論文を最近知りましたので、ご紹介したいと思います。
13日の金曜日に術後再出血は起きやすいのか?
下に示した論文は、扁桃摘出術の術後出血が13日の金曜日などの迷信と関連があるのかを調査したものです。
扁桃摘出術の術後出血と聞けば、耳鼻咽喉科医はみな苦い思い出があり、場合によっては震えるほどの出来事です。
扁桃摘出術は、駆け出しの耳鼻咽喉科医が最初にやるようなシンプルな手術ですが、再出血がおきることがあり、ひどい出血になると窒息しかかったりして、患者さんも主治医も大変な思いをします。
この論文で挙げられているのは、日本人にはなじみがないものもあると思いますが、4つのことについて調べています。
・満月の日に手術をすると良くないか?
・13日の金曜日に手術をすると良くないか?
・悪いことは立て続けに起こるものか?(1週間の間に3件再出血が起こるか)
・赤毛の児は再出血しやすいか?
というものです。
(赤毛についてですが、どうやらイギリスなどでは赤毛に対して差別があるようです。それ以上のことは私もよくわかりません)
その結果、術後の再出血とこれらの迷信とは関連がないことがわかりました。
「まあ、そうでしょうね」という結果ですが、人の心は弱いものですから、こういう迷信に惑わされやすいのでしょうね。
私の好きな言葉は「日々是好日」です。毎日毎日の心がけと言動を磨いて、日々を良い日にしていきたいですね。
今回参考にした論文は、
Kumar VV, et al. Superstition and post-tonsillectomy hemorrhage. Laryngoscope. 2004; 114(11): 2031-2033.
doi: 10.1097/01.mlg.0000147942.82626.1c
です。
Research Question:
扁桃摘出術後の出血は迷信と関係あるのか。
方法:
デザイン:
症例対照研究
対象:
テンプル大学小児医療センター(フィラデルフィア)で
29ヵ月間に扁桃摘出術を受けた小児 389例
比較:
術後出血で再入院となった児と、そうでない児を比較
評価した因子:
・月の満ち欠け
・手術日が13日の金曜日:無作為に選ばれた別の金曜日と比較
・1週間の間に3例再出血が起きたかどうか
・髪の毛が赤毛
結果:
- 施行された589例の扁桃摘出術のうち28例が再出血のため再入院を必要とした。
- 満月の日に手術が行われたのは20例でそのうち1例の再出血が発生した。
- 1週間の間に3例再出血が発生したのは1回だけであった。
- 出血した児のうち4人が赤毛であった。
- 2 件の手術が13日の金曜日に行われたが、再出血はなかった。
- 上記について統計的に解析したところ、扁桃摘出術後の再出血はランダムに起こることがわかった。
結論:
扁桃摘出術後の再出血と、13日の金曜日などの迷信とは関連がなかった。