新型コロナウイルスの影響で、テレワークやフレックスタイムなど、働き方の枠組みが図らずも変わってきています。
コロナが流行する前から、働き方改革が国会でも議論され、実現に向けて進められています。
今回のブログ記事は、働き方と甲状腺との関連についての内容です。
「働き方改革」の実現に向けて
「働き方改革」の実現に向けてについて紹介しています。
甲状腺のはたらき
甲状腺は、首の真ん中の下側にある臓器です。下の図にオレンジ色で描かれている臓器で、正面から見ると蝶々のような形をしています。
甲状腺は甲状腺ホルモンを分泌しています。甲状腺ホルモンは私達にとってとても大事なホルモンの一つです。
その甲状腺ホルモンの働きを一言でいうと、身体を元気にするホルモンです。
つまり、甲状腺ホルモンは全身の細胞に作用して、その代謝を高めます。
代謝とは、食べ物から摂取したタンパク質や脂肪、炭水化物などの栄養素を、身体の組織を作る材料にしたり、身体を動かすエネルギー源として利用したりすることを言います。
それによって、心臓がドキドキと拍動したり、腸が動いたり、汗をかいたり、体温を保ったりします。
甲状腺ホルモンのバランスが崩れるとどうなる
このような大事な甲状腺ホルモンのバランスが崩れると、身体に不調が出てきます。多すぎてもダメですし、少なすぎてもダメです。
多すぎることを甲状腺機能亢進症(バセドウ病)といいます。
手足の振るえ、眼が突出する、甲状腺がはれる、動悸がする、多く汗をかく、疲労しやすい、体重が減少する、高血糖、高血圧などの症状がひきおこります。
反対に、少なすぎることを甲状腺機能低下症といいます。
全身のだるさ、汗が出にくくなる、体重が増加する、便秘、抑うつなどの症状があり、小児だと身長の伸びが遅くなったりします。また、心臓病や糖尿病のリスクが高まるとも言われています。
労働時間と甲状腺のはたらき
下に示した論文は、労働時間と甲状腺のはたらきとの関係を調べた調査です。
その結果、労働時間が長いほど、甲状腺のはたらきは低下する(甲状腺機能低下)割合が多くなることが示されました。
一般に甲状腺機能低下症は、男性よりも女性に多いのですが、この研究では、性別や社会経済的地位を問わず、労働時間が長ければ甲状腺機能低下のリスクが増えることが示されました。
今回が初めての報告で、まだまだ調査や研究が必要ですが、長時間労働が公衆衛生に与える問題点を明らかにする手がかりになるかもしれませんね。
働き方を改めて、より健康な生活を送れるようになると良いですね。
今回参考にした論文は、
Lee YK, et al. Long Work Hours Are Associated with Hypothyroidism: A Cross-Sectional Study with Population-Representative Data. Thyroid. 2020; [published online ahead of print]
doi: 10.1089/thy.2019.0709
です。
Research Question:
長時間労働は労働者の甲状腺機能と関連があるか。
方法:
デザイン:
横断的研究
データ・対象:
2013〜2015年にかけて実施された韓国健康栄養調査(Korea National
Health and Nutrition Examination Survey)のデータ
週36~83時間勤務の成人 2160人を対象とした。
(甲状腺ペルオキシダーゼ抗体陽性の者は除外)
デザイン:
顔面
解析:
多重ロジスティック回帰
結果:
- 甲状腺機能低下症の有病率は、労働時間が長い人ほど高かった。
- 週53-83時間勤務:3.5%
- 週36-42時間勤務:1.4%
- 年齢、性、BMI、尿中ヨウ素濃度、喫煙状況、仕事のスケジュール、社会経済的状況を調整した後、多重ロジスティック回帰を行うと、甲状腺機能低下症の調整オッズ比は週の労働時間が10時間増加するごとに1.46(信頼区間 1.12-1.90)であった。
- 労働時間と甲状腺機能低下症との関連は、性別または社会経済的地位によって層別化された各サブグループで一貫していた。
結論:
長時間労働が甲状腺機能低下症と関連していることを示した初めての研究である。因果関係を明らかにするためには、さらなる研究が必要である。