梅雨前線の影響で毎日じめじめしていますが、梅雨が終われば本格的な夏がはじまります。
今年は新型コロナの影響で学校での水泳の授業が中止になったり、縮小されたりするという話もちらほら聞こえてきます。
カナヅチの私は、学校のプールにあまりいい思い出はありませんが(^^;)、子ども達は毎年水泳を楽しみにしています。
水泳教室に通う子どもは結構多い
2013年の調査では、日本では41.2%の子どもがスイミングスクールに通っていると言われています。
中には、「水泳をやらせると喘息などのアレルギーの症状を予防したり改善できるのではないか?」と思って通わせている方もあるかもしれません。
小さいときの水泳は喘息や鼻炎に影響する?
小さいときに水泳を習わせることが、喘息や鼻炎に影響をあたえるかどうかについては、日本でも海外でもさまざまな研究がされています。
その結果は様々で、喘息や鼻炎を予防あるいは改善できるという報告もあれば、逆に悪化させるという報告もあります。また、プールの水の塩素の影響で病状が悪化するのではないかという議論もあります。
下に示した論文は、日本における研究で、1000人以上の子どもを生まれたときから5歳になるまで追跡してしらべたものです。
その結果は、3歳時に水泳を習わせていることは、5歳時における喘息や鼻炎を予防するとはいえず、また喘息や鼻炎症状を改善させるともいえないという結果でした。
今回の結果からは、喘息や鼻炎に対する水泳の良い効果も悪い効果も得られませんでした。もちろん体力増進の効果はあるでしょうから、水泳をされているかたは頑張って続けてくださいね。そんな私はカナヅチです…(2回目)。
今回参考にした論文は、
Irahara M, et al. Impact of swimming school attendance in 3-year-old children with wheeze and rhinitis at age 5 years: A prospective birth cohort study in Tokyo. PLoS One. 2020; 15(6): e0234161.
doi: 10.1371/journal.pone.0234161
です。
Research Question:
幼少時のスイミングスクール通学が、喘鳴・鼻炎の発症・改善に影響を与えるか。
方法:
デザイン:
単施設、前向き縦断的コホート研究(T-CHILD Study)
対象:
2003年11月から2005年12月までの間に、1,776人の妊婦が登録され、
その子ども1,550人が登録され、5歳まで追跡された。(一般集団から募集)
評価項目:
・3歳時のスイミングスクールへの通学
・3歳時と5歳時に過去1年間の喘息・鼻炎の有無をISAAC(International
Study of Asthma and Allergies in Childhood)質問紙を用いて調査。
★主要評価項目は5歳時の喘息・鼻炎の有無と3歳時のスイミングスクール
通学との関連
交絡因子:
性別、兄弟姉妹の有無、母親のアレルギー性疾患の既往(喘息、
アトピー性皮膚炎、鼻炎)、母親の教育レベル、世帯収入、出生体重、
出産時の母親の年齢、3歳時のペットの飼育、3歳時の受動喫煙、
3歳時の週末のテレビ視聴時間、3歳時の体格(BMI Zスコア)
生後6ヶ月までの授乳
統計解析:
多変量ロジスティック回帰分析
結果:
- 1,097人の児のデータが得られた。
- 3歳時にスイミングスクールに通っていたのは126名(11.5%)であり、5歳時に喘息症状があったのが180名(16.4%)、鼻炎症状があったのが387名(35.3%)であった。
- 3歳時のスイミングスクール通学は、5歳時の喘息および鼻炎との間に有意な関係はなかった。調整オッズ比は以下の通り。
- 喘息: 0.83 [0.40-1.60]
- 鼻炎: 0.80 [0.43-1.60]
- 3歳時に喘息症状があったかどうかに関わらず、3歳時のスイミングスクールへの出席と5歳時の喘息症状との間に有意な関係はなかった。調整オッズ比は以下の通り。
- 3歳時喘息症状なし: 0.65 [0.22-1.92]
- 3歳時喘息症状あり: 0.93 [0.35-2.59]
- 3歳時に鼻炎症状があったかどうかに関わらず、3歳時のスイミングスクールへの出席と5歳時の鼻炎症状との間に有意な関係はなかった。調整オッズ比は以下の通り。
- 3歳時鼻炎症状なし: 1.12 [0.64-1.98]
- 3歳時鼻炎症状あり: 0.39 [0.14-1.14]
- []内は95%信頼区間。
結論:
3歳時にスイミングスクールへ通うことは、5歳時の喘鳴や鼻炎を予防する効果も治療の効果もなかった。
スイミングスクールへ通うことと小児期の喘鳴や鼻炎の発症に影響を与えるという科学的なエビデンスはまだない。