医師の働き方改革が話題になっており、令和2年の診療報酬改訂でも大きなテーマとなっています。
日本救急医学会の以下のポスターも話題になりました。
働き方改革アクションプラン
日本救急医学会,働き方改革アクションプラン
医師も一人の人間ですから、働きすぎて身体をこわしてしまったのでは、元も子もありません。
特に研修医やレジデントは、新しく覚えることも多く、まだ経験が少ない中で診療を行わなければならならず、また休みの日も緊急で呼ばれることが多いため、ストレスが大きいと言われています。そして、中には燃え尽き症候群になってしまう人もいるようです。
下に示した論文は、少人数のレジデントを対象にした研究ですが、週に2時間、医療と関わらないフリーな時間を設けることで、燃え尽きのリスクが少なくなり、幸福感も増すということが報告されています。
健康な身体で、最高の医療を提供したいものです。

今回参考にした論文は、
Stevens K, et al. Association of Weekly Protected Nonclinical Time With Resident Physician Burnout and Well-being. JAMA Otolaryngol Head Neck Surg. 2020; 146(2): 168–175.
です。
Research Question:
耳鼻咽喉科レジデントの燃え尽き症候群の減少と幸福感の増加に、週2時間の臨床フリーの時間の確保は効果があるのか?
方法:
対象:
ミネソタ大学耳鼻咽喉科のレジデント 19人(男性10名、女性9名)
デザイン:
前向き非ランダム化クロスオーバー試験
(第1期と第2期の間は、6週間のインターバルを置いた)
期間:
2017年9月25日から2018年6月24日まで
介入:
毎週2時間の臨床フリーの時間を確保する。
評価スコア:
燃え尽き症候群:Maslach Burnout Inventory
Mini-Z Survey
幸福感:Resident and Fellow Well-Being Index
Quality-of-life single-item self-assessment
結果:
- 毎週2時間の臨床フリーの時間を確保したことにより臨床的に意味のある効果があったもの。
- Maslach Burnout Inventoryの情緒的疲弊感(Emotional exhaustion)スコアの低下
-0.63点 [−1.03 to −0.22] - Resident and Fellow Well-Being Indexスコアの低下
-1.26点 [−2.18 to −0.34] - Mini-Z Surveyの以下のスコアの改善
(以下重み付けκ係数)
★κ係数については下記リンクを参照してください
仕事上のストレス:0.21 [−0.11 to 0.53]
燃え尽き:0.25 [−0.02 to 0.53]
制御を超えた仕事量:0.26 [−0.01 to 0.53]
文献調べの十分な時間:0.31 [0.08 to 0.54]
- Maslach Burnout Inventoryの情緒的疲弊感(Emotional exhaustion)スコアの低下
- 臨床的に意味のある効果がなかったもの。
- Maslach Burnout Inventoryの
非人間化(Depersonalization)スコア
個人的達成感(Personal accomplishment)スコア - Quality-of-life single-item self-assessment
- Maslach Burnout Inventoryの
★κ統計量とは | 耳鼻咽喉科医の独り言
κ統計量は「カッパとうけいりょう」と読みます。「え?何かお呼びですか?」と河童が出てくるかもしれませんが、今回は関係ありません。 κ統計量とは、ある現象を2人の観察者が(あるいは同じ観察者が2回)観察したときに、その結果が どの程度一致しているかをあらわす値です。 値は0〜1までの値をとり、1に近いほど一致しています。……
結論:
耳鼻咽喉科レジデント対象の少ないサンプル数の結果ではあるが、レジデントに対して週2時間の臨床フリーの時間を確保することによって、燃え尽き症候群を減少させ、幸福感を増加させることができた。