お子さんが風邪をひいたとき、夜に何度も「コン、コン、コン」と咳をしていると、お子さんもつらいですが、そばで寝ているお父さん、お母さんもつらくてなかなか夜も眠れませんよね。
そんな子どもの咳に、蜂蜜が効果があるのではないかといろいろ研究がなされています。
下に紹介したのは、今まで行われた子どもの咳に対する蜂蜜の効果を調べた6つの研究をまとめた論文です。
強いエビデンスまでは得られていませんが、蜂蜜は病院で処方される薬や市販薬と比べて咳の回数や咳がつづく時間を減らす効果があるかもしれないという結果でした。
咳の回数でいうと、無治療やプラセボ(偽薬)より効果はありますし、ジフェンヒドラミンよりも効果があり、デキストロメトルファンと同等の効果があるかもしれないそうです。
ジフェンヒドラミンは、抗ヒスタミン薬の一つですが、市販の風邪薬や鼻炎薬によく含まれています。またデキストロメトルファンは咳止め薬で、病院の処方薬ではメジコン®(先発品名)です。
もちろん咳が長く続く場合には、病院で原因を調べてもらう必要がありますが、さしあたってひどい咳を抑えたいときに、手元に咳止め薬がなければ、蜂蜜をなめるのも一つの手かもしれません。
最後に注意があります。1歳未満の児には蜂蜜を与えないでください。1歳以上であれば腸内環境が整っているからよいのですが、1歳未満ではまだ腸内環境が整っておらず、蜂蜜の中にあるボツリヌス菌が腸内で増えて毒素を出すため、乳児ボツリヌス症にかかることがあります。
今回参考にした論文は、
Oduwole O, et al. Honey for acute cough in children. Cochrane Database Syst Rev. 2018; 4(4): CD007094.
です。
Research Question:
小児の急性咳嗽に対する蜂蜜の有効性を評価する。
方法:
方法:
システマティックレビュー
CENTRAL、MEDLINE、Embaseなどのデータベースから2014年〜2018年
までのランダム化比較試験(RCT)を検索し、過去のシステマティック
レビューと統合した。
選択基準:
12カ月から18歳までの外来通院中の小児の急性咳嗽に対するRCT
蜂蜜単独あるいは蜂蜜と抗菌薬の併用と、無治療、プラセボ、蜂蜜入り
咳止めシロップ、市販の鎮咳薬とを比較したもの。
結果:
- 899名の小児を対象とした6つのRCTが抽出された。
- バイアスの評価 ★バイアスについては下のリンクを参照してください。
- 2つの研究で検出バイアスや施行バイアスのリスクが高かった。
- 3つの研究で症例減少バイアスのリスクが不明確であった。
- 3つの研究でその他のバイアスのリスクが不明確であった。
- 7段階のリッカート尺度による評価で、
- 蜂蜜は、無治療あるいはプラセボと比較して、咳の頻度を減らすことができた。
- vs. 無治療:平均変化 -1.05 [-1.48 to -0.62]、I2=0%(2研究、154名)
moderate-certainty evidence - vs. プラセボ:平均変化 -1.62 [-3.02 to -0.22]、I2=0%(2研究、402名)
moderate-certainty evidence
- vs. 無治療:平均変化 -1.05 [-1.48 to -0.62]、I2=0%(2研究、154名)
- 蜂蜜は、デキストロメトルファンと同程度、咳の頻度を減らすことができるかもしれない。
- 平均変化 -0.07 [-1.07 to 0.94]、I2=87%(2研究、149名)
low-certainty evidence
- 平均変化 -0.07 [-1.07 to 0.94]、I2=87%(2研究、149名)
- 蜂蜜は、ジフェンヒドラミンよりも咳の頻度を減らすことができるかもしれない。
- 平均変化 -0.57 [-0.90 to -0.24]、(1研究、80名)
low-certainty evidence
- 平均変化 -0.57 [-0.90 to -0.24]、(1研究、80名)
- 上記、[]は95%信頼区間。
- 蜂蜜は、無治療あるいはプラセボと比較して、咳の頻度を減らすことができた。
- 蜂蜜を最大3日間投与することで、プラセボやサルブタモールと比較して、咳の症状を緩和するのに効果的かもしれない。
ただし、3日を超えると、咳の強さ、咳のうるささ(厄介な度合い)、児や親の睡眠に与える影響に対しては、プラセボやサルブタモールを超える効果はなかった(moderate-certainty evidence) - 蜂蜜単独と蜂蜜を混合したブロメリン(パイナップルに含まれる酵素)との間には、咳の頻度や重症度に対する効果の差はほとんどみられなかった。
- 有害事象は、蜂蜜とそれ以外の治療において差はなかった。
- 多くの児は一晩だけしか蜂蜜を内服していないことが、このレビューの結果の限界である。
★研究のバイアスとは | 耳鼻咽喉科医の独り言
研究を評価するときに、 バイアス を評価することはとても大事なことです。 バイアス(Bias)とは、 研究の結果や推定結果が、真の値からずれてしまうこと、あるいは、そのようなことが起こる過程 を言います。……
結論:
蜂蜜は、無治療、プラセボ、ジフェンヒドラミンよりも咳の症状をより緩和し、デキストロメトルファンと同等の効果があるかもしれない。
また、蜂蜜は、プラセボやサルブタモールと比べて咳の持続時間を短くするかもしれない。
しかし、蜂蜜を使用したほうがよいかどうかについての強いエビデンスは得られなかった。