めまいの再発、予測できるのか?
めまいが治ったと思ったら、また同じような症状が…。
そんな経験はありませんか?
特に50歳以降の女性に多い「良性発作性頭位めまい症(BPPV)」は、治療後も3人に1人が1年以内に再発するという厄介な病気です。
しかし最近の研究により、血液検査の数値から再発リスクを予測できることが分かってきました。今回は490名の更年期女性を対象とした大規模研究から、めまい再発の予測因子と対策についてお伝えします。
なぜ更年期女性はめまいが再発しやすいのか
BPPVは、頭を動かしたときに起こる短時間の激しいめまいが特徴的な病気です。
内耳にある「耳石」という小さな結晶が本来の位置から外れ、三半規管という平衡感覚を司る器官に入り込むことで発症します。特に50歳以降の女性に多く、これは更年期に伴うエストロゲン(女性ホルモン)の急激な減少が深く関わっています。

従来の治療は「耳石置換法」という頭を特定の方向に動かす処置(体操)で、多くの場合その場でめまいは改善します。成功率は高いものの、喜びも束の間、約3割の患者さんが1年以内に再発してしまうのが現実です。
再発すると、めまいによる転倒リスクが高まり、外出への不安や活動制限など、日常生活に大きな支障をきたします。そのため「どの患者さんが再発しやすいか」を事前に知ることは、個別化された予防策を立てる上で極めて重要です。
これまでも年齢や骨粗鬆症、ビタミンD不足との関連は個別に指摘されていましたが、複数の要因を組み合わせた具体的な予測方法は確立されていませんでした。
490名を追跡した研究
今回ご紹介する研究は、中国四川省の5つの病院で2019年から2024年にかけて行われた大規模な調査です。
更年期後の女性490名(平均年齢:約60歳)を対象に、耳石置換法での治療後1年間の経過を詳しく調べました。
研究チームはめまいが再発した人と再発しなかった人の血液検査結果や病歴を詳細に比較しました。そして統計学的手法により、再発に最も影響する要因を特定し、個々の患者さんの再発リスクを数値で表す「ノモグラム予測モデル」を開発しました。
この研究の特徴は、従来の「年齢や性別」だけでなく、血液中のホルモンや栄養素の濃度まで詳しく調べた点です。更年期女性特有の身体の変化と、めまい再発との関係を科学的に解明しようとしています。
再発を左右する4つの重要な要因が判明
研究の結果、1年以内の再発率は30.8%(490名中151名)と、約3人に1人という高い割合でした。
最も重要な発見は、以下の4つの要因が再発リスクに有意な影響を与えているだろうということです。
【血液検査で分かる3つの危険因子】
①エストラジオール(女性ホルモン)が低い
②ビタミンD濃度が低い
③血清カルシウム値が低い
【病歴による危険因子】
④片頭痛の既往がある

これらの数値から作成されたノモグラム(予測図表)により、医師は患者さん一人ひとりの再発確率を具体的に予測できるようになります。例えば、ビタミンDが著しく不足していて片頭痛の既往がある方は、再発リスクが60%を超える可能性があります。
これらの結果から、具体的な予防策としては以下のようなものが考えられます。まだじゅうぶんなエビデンスがあるわけではありませんが、参考にしていただければと思います。
【予防策】
・ビタミンDサプリメント(推奨量:1000-2000IU/日)の摂取
・カルシウムを豊富に含む食品(乳製品、小魚、緑黄色野菜)の積極的摂取
・片頭痛の適切な治療と管理
・定期的な血液検査による数値のモニタリング
まとめ
更年期女性のBPPV再発リスクを血液検査の数値から予測するモデルを紹介しました。
特にビタミンD不足と女性ホルモンの低下は要注意です。定期的な検査と生活習慣の見直しで、めまい再発のリスクを減らすことができるかもしれません。
※本記事は最新研究を分かりやすく解説したものであり、診断・治療は専門医へご相談ください。

今回参考にした論文は、
Pan QC, et al. Risk factors and nomogram model for recurrence of benign paroxysmal positional vertigo in postmenopausal women: a multicenter cross-sectional study. Front Neurol. 2025 May 12;16:1595887.
DOI:10.3389/fneur.2025.1595887
です。
Research Question:
閉経後女性のBPPV患者において、耳石置換法後1年以内の再発に影響する危険因子を特定し、予測モデルを構築する
Methods:
デザイン:
多施設後ろ向き横断研究
サンプル:
n=490(中国四川省5病院、2019-2024年、閉経後女性BPPV患者)
主要アウトカム:
CRP治療後1年以内のBPPV再発
解析:
LASSO回帰による変数選択後、多変量ロジスティック回帰分析でノモグラム予測モデル構築;
主要調整因子は年齢、BMI、併存疾患
Results:
- 主要結果:
- 全体再発率 30.82%(151/490例)
- Training set 30.90%(106/343例)、Validation set 30.61%(45/147例)
- 全体再発率 30.82%(151/490例)
- 独立危険因子:
- 片頭痛:OR=2.208 [95%CI 1.278-3.817]
- 血清Ca:OR=0.601 [95%CI 0.447-0.81]
- 25(OH)D:OR=0.785 [95%CI 0.713-0.864]
- エストラジオール:OR=0.820 [95%CI 0.752-0.894]
- モデル性能:
- C-index Training set 0.743、Validation set 0.756;キャリブレーション良好
- DCA(決定曲線分析)閾値確率 0.050-0.860で臨床的有用性あり
Conclusion & Implication:
- 著者結論:
片頭痛、低25(OH)D、低エストラジオール、低血清Caが閉経後女性BPPV再発の独立危険因子であった。
構築されたノモグラム予測モデルは良好な識別能と較正性を示す - 臨床応用ポイント:
血液バイオマーカーによる個別化再発リスク評価が可能
高リスク患者の早期同定とビタミンD補充等の予防的介入の科学的根拠を提供






