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メニエール病ってどんな病気?

 メニエール病と聞くと、まるでめまいの代名詞のように思っている方も多いと思いますが、めまいのすべてがメニエール病ではありませんし、めまい患者のなかでそんなに多くの割合を占めてはいません。

 めまいで病院を受診して「メニエールかもしれんね」と言われて、その後症状がおさまったために、それ以上検査などをしなかった場合に、患者さんは「私はメニエール病になったことがある」と思い込んでいる場合もありますが、よくよく調べてみるとメニエール病ではないことが多いです。

 では一体、メニエール病とはどんな病気なのでしょうか。

メニエール病とは?

 メニエール病は内耳の障害によっておきる病気です。

 内耳の中のある部分にたまっている内リンパ液が増えてむくむ(内リンパ水腫)のが原因でないかと言われています。

 下の図のように内耳はカタツムリみたいな形をしています。この図はカタツムリの殻の部分が切断された図になっていますが、その殻の中の内リンパ液のたまっている部分がむくむのを内リンパ水腫と言います。

 メニエール病はほとんど成人にみられる病気で、40〜60歳に多いと言われています。

メニエール病の症状は?

 メニエール病のめまいは、10分〜数時間程度つづくめまいが2回以上繰り返すというのが特徴です。繰り返すがキーワードで、1回で治まるものはメニエール病とは言われません。
 アメリカの学会のガイドラインでは、そのめまい発作はランダムに年6〜11回程度起こると書かれています。

 また、めまいに伴って、難聴、耳鳴り、耳がつまった感じがあり、その症状が変動します

メニエール病をどのように診断するか?

 メニエール病の診断には、まず前に述べた症状が大事です。

 下に示した診断基準を見ても、まず症状が出てきます。

 ですから、医師は患者さんに、めまいがどれくらい続いたか、めまいを繰り返していないか、難聴や耳鳴りなどの他の症状はないかと、しっかりと問診します。
 メニエール病は繰り返すのが特徴ですから、初めてめまいが起きた時に、メニエール病だと診断はできないのです。何回かめまいが起きてはじめてメニエール病と診断できます。

 問診で症状を聞いた上で、聴力検査平衡機能の検査などを行って、メニエール病だと診断するのです。また、他の病気を除外するために、画像検査を行うこともあります。メニエール病(Meniere’s disease)診断基準
A.症状
 1.めまい発作を反復する。めまいは誘因なく発症し,
   持続時間は10分程度から数時間程度。
 2.めまい発作に伴って難聴,耳鳴,耳閉感などの聴覚
   症状が変動する。
 3.第Ⅷ脳神経以外の神経症状がない。
B.検査所見
 1.純音聴力検査において感音難聴を認め,初期にはめ
   まい発作に関連して聴力レベルの変動を認める。
 2.平衡機能検査においてめまい発作に関連して水平性
   または水平回旋混合性眼振や体平衡障害などの内耳
   前庭障害の所見を認める。
 3.神経学的検査においてめまいに関連する第Ⅷ脳神経
   以外の障害を認めない。
 4.メニエール病と類似した難聴を伴うめまいを呈する
   内耳・後迷路性疾患,小脳,脳幹を中心とした中枢
   性疾患など,原因既知の疾患を除外できる。
 5.聴覚症状のある耳に造影 MRI で内リンパ水腫を認める。
診断
 メニエール病確定診断例(Certain Meniere’s disease)
  A.症状の3項目を満たし,B.検査所見の5項目を満たしたもの。
 メニエール病確実例(Definite Meniere’s disease)
  A.症状の3項目を満たし,B.検査所見の1~4の項目を満たしたもの。
 メニエール病疑い例(Probable Meniere’s disease)
  A.症状の3項目を満たしたもの。
診断にあたっての注意事項
 メニエール病の初回発作時には,めまいを伴う突発性難聴と鑑別
 できない場合が多く,診断基準に示す発作の反復を確認後にメニ
 エール病確実例と診断する。

↑クリックすると文献にリンクします。

メニエール病の治療は?

 メニエール病の治療には以下のようなものがあります。

  • まず、よく説明を受けてどのような病気なのかを理解する
     これすごく大事です!
     一度めまいの発作を起こした方は、また同じような発作が起きる
     のではないかという不安が出てきます。
     それを一つ一つ解決していくには、病気の理解と医療者への繰り
     返しの相談が大事です。
     
  • 食生活の改善:塩分、アルコール、カフェインを減らす。
     エビデンスの高い研究結果は出ていませんが、塩分やカフェインを
     控えることで、症状が改善すると言われています。
     
  • 内服治療:抗めまい薬、利尿薬、抗アレルギー薬
     めまい症状をおさえてくれるのが抗めまい薬です。
     利尿薬は内リンパ水腫を改善するのが目的です。
     メニエール病のおよそ30%にアレルギーが関与しているという
     報告もあり、抗アレルギー薬をつかう場合もあります。
     
  • 鼓室内注射
     ステロイドや抗生物質(ゲンタマイシン)を鼓膜に針を刺して
     耳の中に入れる治療です。
     
  • 手術:内リンパ嚢開放術
     なかなか治らない場合には、むくんでいる内リンパのたまった
     袋を開放させる手術をします。
     
  • 理学療法
     平衡感覚をきたえて改善させるリハビリです。
     
  • 補聴器

めまいのことをよく理解しよう

 めまいが起きたら、天地がひっくりかえるような感覚になって、吐き気も出るし、まためまいが起きるのではないかと不安になりますよね。

 めまいナビという一般向けのサイトがありますから、ぜひ読んでめまいのことをよく知って、治療していきましょう。

「めまいナビ」めまい・ふらつき・吐き気・頭痛・耳鳴り等の症状の情報サイト

2014年03月06日 専門医に聞く「めまいと日常生活に関する質問」を追加いたしました。 2014年01月20日 専門医に聞く「めまいと食生活に関する質問」を追加いたしました。 ……

文献:

Basura GJ, et al. Plain Language Summary: Ménière’s Disease. Otolaryngol Head Neck Surg. 2020; 162(4): 435–445.
doi: 10.1177/0194599820909437

Basura GJ, et al. Clinical Practice Guideline: Ménière’s Disease Executive Summary. Otolaryngol Head Neck Surg. 2020; 162(4): 415–434.
doi: 10.1177/0194599820909439

池園 哲郎, 他. めまいの診断基準化のための資料 診断基準2017年改定. Equilibrium Research. 2017; 76(3): 233-241.
doi: 10.3757/jser.76.233

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