新型コロナウイルス感染への対策でよく言われているのは手洗い、うがい、マスクです。もちろんこれはとても大事なことです。
今日は、少し視点を変えて、普段の何気ない行動に目を向けてみましょう。
顔を触るのは感染の原因になる!?
何気ない行動とは「顔を触る」という行動です。
「顔を触るのが何が悪いんだ」と思われるかもしれませんが、顔の中でも目、鼻、口といった粘膜に触れる場所を触ると、手に付いていたウイルスや細菌が粘膜を通して身体の中に入ってしまい、感染の原因になることがあるのです。
もちろん鼻をほじるのは良くないことはわかると思いますが、鼻の入り口を触るだけでも良くありません。
無意識に顔を触る回数は?
下に示した論文は、学生を対象にした研究で、のべ4時間の講義の間に、無意識に顔を何回触るかということを調べたものです。
その結果、1人の人が1時間あたり23回も顔を触っていたという結果でした。特に、粘膜に触れやすい目、鼻、口には1時間あたり10回触っていたそうです。
単純計算すると、起きている時間を16時間とすれば、1日に160回も目や鼻、口に触っているということなのです。
皆さんもちょっと自分の仕草に意識を向けてみると、何気なしに何度も何度も顔を触っていることに気づくと思います。
その1回1回の顔を触る行為が、感染の原因になるかもしれないのです。
手を洗いましょう
ではどうすればよいのでしょうか。
もちろん意識をして顔を触らないようにするのも大事です。しかし、クセをなおすというのは結構大変ですよね。
ですので、仮に顔を触ってしまっても大丈夫なように、手をこまめに洗うこと、マスクをして手と鼻・口が直接触れないようにすることが大事です。
(注:マスクを触った場合、今度はマスクの表面にウイルスや細菌が付いていますから、その後に手を洗うことが必要です)
極論すれば、鼻をほじるときはその前に手を洗う(^^;)、ということです。
手の洗い方については、以下の記事に書きましたので読んでみて下さい。
コロナウイルス予防には手洗いが基本!手洗いの正しい方法と注意点 – 1万年堂出版
毎日ニュースでは新型コロナウイルスの話題で持ちきりです。が、新型コロナウイルスだけではなく、インフルエンザやノロウイルスなど、私たちのまわりには様々な病原体がいます。ウイルスに感染しない、またうつさないようにするためには?どんな病原体に対しても大事な対策「手洗い」を解説します。
顔を触らない、そして手を洗う。
これが感染予防の第一歩です。
今回参考にした論文は、
Kwok YL, et al. Face touching: a frequent habit that has implications for hand hygiene. Am J Infect Control. 2015; 43(2): 112–114.
doi: 10.1016/j.ajic.2014.10.015
です。
Research Question:
生活の中で、手と顔の接触頻度はどれくらいか調査をする。
方法:
デザイン:
行動観察研究
対象:
ニューサウスウェールズ大学の医学生 26名 2010年5月実施
(手指衛生、無菌手技、感染対策など感染制御の授業を1回4時間
修了している)
方法:
感染管理とは関係ない2時間の講義を2回受講する。
その様子をビデオで撮影する。(授業の1週間前に学生には周知してある)
評価:
同一研究者がビデオを複数回閲覧し、標準化されたスコアリングシート
を用いて、
・手と顔の接触頻度
・触った顔の部位
・粘膜部位(目、鼻、口)か非粘膜部位(耳、頬、顎、額、髪)かの区別
・接触時間
を集計した。
結果:
- 26名の学生が、240分間に、合計2346回顔を触っていた。
- そのうち56%(1322回)は非粘膜部位、44%(1024回)は粘膜部位への接触であった。
その内訳は以下の通り。【】内は一人1時間あたりの平均 - 非粘膜部位
- 顎:31%(409回)【3.9回】
- 頬:29%(383回)【3.7回】
- 髪:28%(369回)【3.5回】
- 頸部:8%(104回)【1.0回】
- 耳:4%(57回)【0.5回】
- 粘膜部位
- 口:36%(372回)【3.6回】
- 鼻:31%(318回)【3.1回】
- 目:27%(273回)【2.6回】
- 複数箇所:6%(61回)【0.6回】
- 平均1時間あたり、23回顔を触っていた。
(中央値 29回、四分位範囲 42.2-108.2回) - 粘膜部位に触れた時間の平均は口が2秒、鼻が1秒、目が1秒であった。
結論:
手と顔面(特に粘膜部位)との接触頻度は多く、手指の衛生管理は感染伝播を断ち切るために不可欠で安価な予防法であると考えられる。
また、顔を触る行動がよく行われており、感染の媒介となりうることを意識することで、医療従事者が患者と接触する前後の手指衛生が、自分自身や患者にとって感染伝播を減らす有効な方法であるというメッセージを受け入れるようになるだろう。