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★舌下免疫療法は何年続ければよいのか?

 現在日本では、スギ花粉症やダニが原因の通年性アレルギー性鼻炎に対して、舌下免疫療法が行われています。

 舌下免疫療法は、症状を抑えるだけの対症療法とは異なり、アレルギー体質を改善させる治療です。

 舌下免疫療法の効果は、治療を行った7〜8割の人に効果があると言われており、「花粉症の時期に薬を飲まなくても全然問題ありませんよ」という方や、「薬をひどい時だけ飲めむだけで済むようになりました」という方も多くおられます。

 詳細については、以下のサイトに記事を書きましたのでご一読ください

スギ花粉の飛ばない時期こそ花粉症治療を!「舌下免疫療法」とは? – 1万年堂出版

暖かい春が過ぎて、梅雨の季節になると、スギ花粉症の人にとっては、よろこばしい季節かもしれません。 花粉も飛び終わり、鼻にとっては都合の良い湿気の多い季節が梅雨の時期です。 「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ということわざがあり …

何年続ければ、その後の効果は持続するのか?

 舌下免疫療法は3年以上は続けましょうと推奨されていますが、では止めた後にどれくらい効果が持続するのでしょうか。
 また、舌下免疫療法を何年続ければより効果的なのでしょうか。

 下に示した論文は、ダニの舌下免疫療法を3年間、4年間、5年間行った人を比較して、舌下免疫療法を止めた後の症状などを比較した研究です。

 結果は、3年よりは4年継続したほうがその後の効果がより持続しましたが、4年継続と5年継続を比べると同等の効果でした。
 また、4年や5年継続したときの症状以外の指標(鼻の好酸球数、気道の過敏性)も3年継続よりは効果が持続していました。

 ですから、最低4年間は続けるのがよいというのがこの研究の結論です。

ぶり返したら、再開すればすぐに元に戻る

 この研究でもう一つ示されたのは、もし症状がぶり返した場合には、もう一度舌下免疫療法を再開すれば、すぐに効果が現れて元の良い状態に戻ることも示されています。

 舌下免疫療法をしている方は、主治医の先生とよく相談して、治療を行ってください。

 舌下免疫療法については、拙著「あんしん健康ナビ 花粉症・アレルギー性鼻炎」にも書かれていますので、是非お読みください。

 

今回参考にした論文は、
Marogna M, et al. Long-lasting effects of sublingual immunotherapy according to its duration: a 15-year prospective study. J Allergy Clin Immunol. 2010; 126(5): 969–975.
doi: 10.1016/j.jaci.2010.08.030
です。

Research Question:

 ダニ舌下免疫療法(SLIT)の長期効果がどれだけ持続するかをプロスペクティブに評価する。

方法:

 デザイン:
  部分的に無作為化した前向きオープン4群間比較試験
  (1992から2007年まで15年間追跡調査)
 対象患者:
  ダニのみに感作された呼吸器アレルギー患者 18〜65歳の男女
   ・2年以上持続するアレルギー性鼻炎
   ・皮膚プリックテストかRASTでダニ単独感作
   ・FEV1は予測値の80%以上
   ・メサコリン気道過敏性試験陽性(PD20が400μg未満)
   ・鼻汁好酸球が19%以上
 割付け:
  薬物療法単独(コントロール)、SLIT3年間投与、SLIT4年間投与、
  SLIT5年間投与の4群
に分けた。
  SLITをするかしないかについては、患者の希望に応じて割り付けし、
  SLITを行う期間については、無作為に割り付けた。
 評価:
  症状薬物スコア(SMS)、皮膚感作、メサコリン気道過敏性、鼻腔内好酸球数
  毎年冬期に評価した。
  SMSがベースラインの50%以下の場合、臨床効果が持続
  していると判断した。
  臨床効果が持続しなかった人は、SLITの再投与を行った。

結果:

  • 78名の患者が登録され、59名が本試験を終了した。
    • コントロール12名、SLIT3年14名、SLIT4年16名、SLIT5年17名
  • SLITのアドヒアランスはすべての群で80%以上であった。
  • コントロール群は、研究期間中、SMSの有意な変化は見られなかった。
  • SLIT3年群は、臨床効果はSLIT終了後7年間持続した。
  • SLIT4年群または5年群は、臨床効果はSLIT終了後8年間持続した。
  • 臨床効果が持続しなくなって2回目のSLITを開始した場合、初回のSLITよりも急速に臨床効果を認めた
  • 15年間におけるダニ以外の抗原に対する新たな感作はコントロール群全例で発生し、SLIT群では4分の1以下の症例にとどまった(3年群:21%、4年群:12%、5年群:11%)。
  • メサコリン気道過敏性、鼻腔内好酸球数の挙動は、SMSの挙動とほぼ一致していたが、SLIT4年群、5年群においては、全研究期間においてベースラインとの差(効果)が認められたままであった。

結論:

 SLIT終了後の臨床効果はSLIT4年群と5年群では同等の長期的な効果をもたらし、SLIT3年群よりも優れていたため、SLITは4年間継続するのが最適であることが示唆された。
 臨床症状だけでなく、局所の炎症(鼻腔内好酸球数)や気道過敏性も同様の効果の持続が認められた。
 また、効果が持続しなかった場合、再度SLITを行うと速やかに効果を発揮することが示された。

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