寒い日々が続いており、私の住んでいる富山県は35年ぶりの大雪で、積雪は100cmを超えています。
まだまだ春は先のように思いますが、もう2カ月も経てば暖かくなってきます。春はいい季節ですが、スギ花粉症の方にとってはつらい季節でもあります。
新型コロナも治まらない中で、くしゃみや鼻水などの花粉症症状をどのように抑えるか。
そのキーワードはバレンタインデーです。んっ?どういうことでしょうか。
花粉症の鼻の中は火事?
花粉症の人の鼻の中はどのようになっているか、ご存じでしょうか?
ふつうは、鼻の中なんか見たこと無いですよね。そりゃそうです。我々耳鼻咽喉科医は鼻の中を毎日何十人も診ています。街中で患者さんに会ってもどんな人だったかなかなか思い出せないのに、鼻の中をみたら思い出すこともあったりして(^^;)。
花粉症シーズンに花粉症の人の鼻をみると、粘膜が赤くなっています。炎症が起きているのです。炎症という言葉は、医者はあたりまえのように使う言葉ですが、一般の方にはわかりにくいですよね。
「炎症」という文字通り、まさに炎が燃えているように、粘膜が赤くなっている、熱くなっているとイメージしてもらえばよいと思います。鼻の中で火事が起きているイメージです。
初期療法:症状は早めに抑えるべし
火事が起きたら皆さんはどうしますか?
火を消しますよね。消火の基本は初期消火ですね。火が燃えさかってからでは消防車が来てもなかなか消せませんが、火が出始めた段階であれば消化器で消せるかもしれません。
それと同じように、花粉症の炎症も、早いうちにやっつけたほうがよいのです。
これを初期療法と言います。
鼻がぐずぐずして、鼻水ダラダラの状態でもう限界!となってから初めて対処しても焼け石に水となりますが、まだ症状が少ないうちに対処すると効果的なのです。
初期療法はどのタイミングで始めたらよいか
ではどのタイミングが良いのでしょうか。
以前のガイドラインでは、花粉が飛散しはじめる1~2週間前から薬を飲むと良いと言われていましたが、最近の薬(第2世代抗ヒスタミン薬)は昔の薬より即効性がありますので、症状が少し出たタイミングで投与開始しても効果が期待できます。(下に示した論文は、第2世代抗ヒスタミン薬の一つであるレボセチリジンを用いた研究で、花粉に暴露する前から内服する場合と、花粉に暴露する初日にはじめて内服する場合とを比べると、効果に大きな違いはなく、どちらも十分効果があるということを示したものです)
ですから、花粉が飛散し始めたころに内服を開始するのが良いタイミングと言えます。花粉の飛散開始は地域によって差がありますが、私はいつも患者さんが覚えやすいように「バレンタインデーぐらいから内服し始めるといいですよ」とお話ししています。そう、これがキーワードのバレンタインデーです。
スギ花粉症の治療はバレンタインデーから!
以下のリンク先にも同じような内容で寄稿しましたので、これも是非お読みください。
早い対処で症状を抑えて、爽やかな春を迎えましょう。
今回参考にした論文は、
Yonekura S, et al. Randomized double-blind study of prophylactic treatment with an antihistamine for seasonal allergic rhinitis. Int Arch Allergy Immunol. 2013; 162(1): 71-8.
doi: 10.1159/000350926.
です。
Research Question:
スギ花粉症に対する抗ヒスタミン剤による初期療法の有効性を検討する。
方法:
デザイン:
無作為化二重盲検 3 群間クロスオーバーデザイン
対象:
スギ花粉症患者
介入:
A群:プラセボを8日間投与
B群:プラセボを7日間投与した後、8日目にレボセチリジンを投与
C群:レボセチリジンを8日間投与
上記3群に対し、スギ花粉暴露室で8日目に1時間、9日目に3時間スギ花粉を暴露させた。
評価項目:
主要評価項目:9日目の12時間の総鼻症状スコア
副次的評価項目:その他の鼻症状および眼症状
結果:
- 50名エントリーされた内、45名の被験者で評価ができた。
- 9日目の総鼻症状スコアは,A群と比較してB群の方が有意に低かったが,C群はB群と比較して有意な効果は認められなかった。
結論:
症状発症後すぐにレボセチリジンを早期に介入することで,花粉飛散前からの初期療法と同等の効果が得られる可能性が示唆された。
これらの結果は、患者の利便性と医療費削減の観点から重要である。