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国試問題からひも解く耳鼻咽喉科の病気〜喫煙者の長びく声がれ〜

 今年の医師国家試験は2月6〜7日に終わりました。受験生の皆さん、お疲れ様でした。合格発表までは不安な日々かもしれませんが、しばし心と体を休めて下さい。

 今年の医師国家試験問題から、耳鼻咽喉科の病気をひも解いてみましょう。

今日の医師国家試験問題:115回A-28

問題文を読むのがわずらわしい方は飛ばしてお読み下さい。

https://bbs.icrip.jp/forums/topic/115a-28/から引用

声を出す仕組み

 多くの動物の中でも、声を出して言葉をしゃべることが出来るのは人間だけです。

 声はどのようにして出るのでしょうか。喉頭という、のど仏の奥にある器官が声を出すためにはたらいています。

 日本耳鼻咽喉科学会のホームページにある図を下に示します。

 喉頭を上のほう(鼻や口のほう)から見た図です。左側の図が呼吸をしているときです。呼吸をしているときは、声帯がVの字になっていて、吸った空気が気管(肺)のほうへ入っていきます。

 そして右側の図が声をだすときです。声を出すときには、Vの字であった声帯が真ん中で合わさります。合わさった声帯の間を吐いた空気が通ることによって、声帯が振動して声が出ます

http://www.jibika.or.jp/citizens/daihyouteki/intou.htmlから引用

 実際どのように振動しているのかは、YouTubeの動画をごらんください。

声帯にできる病変や異常は声がれを引き起こす

 声を出しているもっとも大事な場所は声帯ということがおわかりになったと思います。

 ですから、声帯に何か異常があれば声がかれるのです。

 風邪をひいて声がかれるのは、声帯が炎症によって赤くなって腫れるからです。また、声帯の動きが悪くなる病気もあって、それで声がかれることもあります。

 今回の問題では、声帯に何かの病変ができている写真が主に並べられています。

 ①は声帯にイボみたいな出っ張りができています。声帯ポリープの写真です。このようにポリープができるとそれが邪魔して声帯がきれいに合わさりませんから、声がかれてしまいます。

 ②は声帯がやせていて溝ができています声帯溝症の写真です。声帯に溝ができていると、声帯が合わさっても隙間ができてしまい、声がかすれてしまいます。

 ③は声帯はあまり異常はなさそうです。ですから声はかれていないと思われます。ただ、声帯よりも手前(写真でいうと左下のところ)にモコモコしたものが見えます。おそらくこれは声帯よりも上側にできた喉頭癌だと思います。

 喉頭癌にもいろいろあって、声帯にできる癌の場合は、①のポリープと同じように、小さな癌ができても声がかれるので早く発見できるのですが、声帯よりも上にできる③のような癌の場合は、癌ができても声がかれないので、なかなか見つからず、大きくなって進行してから見つかる場合がありますので、注意しなければなりません。

 喉頭癌になる大きな原因はタバコです。タバコを吸っている人は、吸っていない人と比べて20倍以上喉頭癌になりやすいと言われています。

 ④は右側の声帯(患者さんにとって右ですので、写真では左)に腫瘍ができています。乳頭腫か何かでしょうか。これも腫瘍の影響で声帯がうまく合わさりませんので、声がかれてしまいます。

 ⑤は両側の声帯がブヨブヨに腫れています。これはポリープ様声帯と言われます。これはタバコの吸い過ぎが原因となって、声帯の粘膜がブヨブヨになってしまう病気です。粘膜の奥にはゼリーみたいなものが入っていて触ってみると本当にブヨブヨなのです。声帯に張りがなくブヨブヨですから、うまく声帯が振動せず声がかれてしまいます。また、ブヨブヨがひどくなりすぎると、息の通り道が狭くなって息苦しくなる場合もあります。(長年タバコを吸っていて、20年来声がかれている、この72歳の女性はポリープ様声帯と思われますので、これが正解です。)

声がれの予防・治療

 声がれを予防するにはどんなことに気をつければよいでしょうか。

  • 乾燥をさけ、加湿しましょう。
    • 粘膜は本来粘液で潤っているものです。たとえば口呼吸ばかりをしていてのどの粘膜が乾燥してしまうと本来の粘膜の潤いがなくなって声がかれてしまいます。また、風邪もひきやすくなりますからそれで声がかれやすくなります。
  • タバコをやめましょう。
    • ③の喉頭癌も⑤のポリープ様声帯も、タバコが原因です。
  • 大きな声を長い間出しすぎないようにしましょう。 
    • 大きな声を長い間出していると、声帯に負担がかかります。何度も何度も声帯がぶつかって声をだしているので、ちょうどペンダコのように声帯にタコができたりします。

 ではもし声帯にこのような病変ができてしまったら、どのような治療があるのでしょうか。

 癌である③はここでは除きますが、それ以外の病変の場合、内服薬や吸入の治療、あるいは声の出し方を指導したりしても改善しなければ、手術を行うことになります。

 のどの小さな病変を触るので、手術は基本的には全身麻酔で行います。そして、のどに細い筒を入れて、口から声帯が一直線になるようにして、顕微鏡で声帯を見ながら、長いハサミやメスなどを使ってこれらの病変を切除します。喉頭微細手術と言われます。

 声がれでお困りのときは、ぜひ耳鼻咽喉科を受診してください。

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