日に日に暖かくなって、桜の花も咲いてきて、過ごしやすい春の季節になりました。
しかし、スギの花粉もたくさん飛んでいて、花粉症も真っ盛りです。みなさん、花粉症の対策は大丈夫でしょうか。
具体的な対策については、こちらのYahoo!ニュースの記事がわかりやすいですので、是非ごらんください。
今回のブログ記事では、ちょっと変わった花粉症対策を取り上げます。脇の下と鼻づまりの関係です。
舞妓さんが帯を胸高にきつく締める理由
鼻づまりの話をするはずなのに唐突ですが、京都の舞妓さんが、帯を胸高に締めるのはなぜだかご存じでしょうか?
それは、顔に汗をかかないようにして、おしろいが落ちないようにするためなのです。
皮膚圧-発汗反射と言われるのですが、たとえば右の脇の下を圧迫すると圧迫した右半身からの発汗が減ると言われています。
これは、1930年代に緒方維弘らによってその現象が発見され、それが皮膚の圧迫による反射であることを高木健太郎らが明らかにしました。
脇の下の皮膚を圧迫すると、同じ側の交感神経の働きが抑制されて、汗が出にくくなるのです(交感神経は発汗を促す神経で、副交感神経は発汗を抑える神経です)。
圧反射は鼻の通りにも影響する
交感神経と副交感神経(あわせて自律神経といいます)はいろいろな作用がありますので、この皮膚圧反射は汗だけでなくいろいろなことに影響を与えます。
脇の下の皮膚を圧迫すると、圧迫した側の交感神経の働きが抑えられますので、皮膚の温度は低くなり、血圧は低下し、鼻粘膜の血管は広がります。
鼻に注目すれば、圧迫した側の鼻粘膜の血管が広がるので、粘膜は分厚くなり、鼻が詰まります。すると、反対側の鼻ではその反動で交感神経の働きが高まりますので、鼻粘膜の血管は縮こまって、粘膜は薄くなり、鼻の通りが良くなるのです。
つまり、「脇の下の皮膚を圧迫すると、反対側の鼻の通りが良くなる」のです。実際の鼻の中の写真は、文献4に出ていますので、見てみてください。
鼻づまりがひどいときの対処法
ですから、鼻が詰まってどうしようもないときには、詰まっているほうと反対側の脇の下を圧迫すればよいのです。
方法としては、脇の下に水の入ったペットボトルやボールを挟んだりします。数分はさむと反対側の鼻が通るようになります。
あるいは、寝ている時に鼻がつまった場合には、詰まった側を上にして横向きに寝れば、反対側の脇が床(布団)で圧迫されますので、鼻が通るようになります。右を下にして寝れば左の鼻が、左を下にして寝れば右の鼻が通るようになるということです。
この反応は一時的なものですので、どうしても鼻が詰まって困ったときの一時しのぎの対処法と思ってください。
じゃあ、両方の脇の下を圧迫したらどうかな?と思われるかもしれませんが、そうすると両側の交感神経が抑えられてしまうので、鼻づまりは改善しません。片方ずつやりましょう。
意外な鼻づまり対処法をご紹介しました。
下記の拙著にもいろいろな対処法が書かれていますので、是非お読みください。
参考文献:
- Takagi K et al. A sweat reflex due to pressure on the body surface. Jpn J Physiol. 1950; 1: 22-28.
DOI: https://doi.org/10.2170/jjphysiol.1.22 - 小川 徳雄. 皮膚圧迫と発汗反応 ―半側発汗のメカニズム―. 繊維製品消費科学. 2002; 43(8): 506-511.
DOI: https://doi.org/10.11419/senshoshi1960.43.8_506 - 高木 健太郎. 圧反射. 熱帯医学会報. 1961; 2(1): 5-7.
DOI: https://doi.org/10.14876/tmh1960.2.5 - 近藤 健二. 鼻炎の病態生理と神経反射. 耳鼻咽喉科免疫アレルギー. 2017; 35(3): 261-265.
DOI: https://doi.org/10.5648/jjiao.35.261