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★術前の小児の不安に対してモバイル端末は効果があるか

 耳鼻咽喉科の手術は、小児を対象とした手術も多くあります。

 耳の中に水が溜まる滲出性中耳炎に対する鼓膜チューブ挿入術、アデノイド(鼻の奥、つきあたりにある扁桃せんの仲間)の腫れに対するアデノイド切除術、扁桃せんの腫れに対する扁桃摘出術などです。

子どもは子どもなりに手術を受け止めている

 大人でも手術の前になると不安な気持ちが出てきますが、子どもも子どもなりに不安な気持ちを感じています。
 

 以前の研究によると、手術前の子どもの不安が大きいと、術後にせん妄を起こしたり、否定的な行動変化が見られやすいと言われており、さらに術後に睡眠障害、恐怖心、摂食障害を抱える可能性があります。

 手術をする子供の親もまた、強いストレスや不安を感じます。そしてそれは、子供にも影響を与えます。

子どもの不安を軽減させる方法

 治療中の子どもの不安や痛みを軽減する1つの方法として、「気晴らし」の道具を使用することがあげられます。これにより、子どもの注意を、不安や痛み以外の何かに向けることができます。

 気晴らしには、能動的なもの受動的なものに分けることができます。
 能動的な気晴らしには、バーチャルリアリティ(VR)、双方向性のおもちゃなどがあります。一方、受動的な気晴らしとは、音楽を聴いたり、テレビやビデオを見たりすることです。

 他にもピエロセラピーといって、ピエロが子どものベッドサイドに訪問して気晴らしをしてもらうという方法があります。これもとても有効な方法です。ただピエロセラピーはいつでもどこでもできるわけではなく、費用もかかります。

NPO法人日本ホスピタル・クラウン協会

平素は日本ホスピタル・クラウン協会の活動にご協力を賜り、厚くお礼申し上げます。 …

 そこで、ウェブベースのモバイル端末を用いた方法が注目されています。

子どもの不安を軽減させる方法

 下に示した論文は、ウェブベースのモバイル端末を用いた方法が、術前の子どもの不安を和らげるかどうかを調べた研究を集めてまとめたものです。

 それによると、ウェブベースのモバイル端末を用いた術前の気晴らしは、手術の不安を軽減させることがわかりました。

 このような薬にたよることのない方法を効果的に用いて、手術に対する不安をできるだけ和らげ、手術を受けていただきたいと思います。

 

今回参考にした論文は、
Rantala A, et al. The effectiveness of web-based mobile health interventions in paediatric outpatient surgery: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials [published online ahead of print]. J Adv Nurs. 2020.
doi: 10.1111/jan.14381
です。

Research Question:

 小児外来手術におけるウェブベースのモバイルヘルス介入は有効か。

方法:

 デザイン:
  ランダム化比較試験のシステマティックレビューとメタアナリシス
 対象とした研究:
  外来手術を行う小児(18歳未満)患者に対し、
  インターネットまたはモバイルプラットフォームを介して配信されるウェブ
  ベースのモバイルヘルス介入を行うことが、
  標準ケアと比較して、
  児の不安や痛み、親の不安や満足感に影響を与えるかを調べた
  ランダム化比較試験
 検索:
  CENTRAL、CINAHL、Scopus、Ovid MEDLINE、Web of Scienceを
  時間制限なしで系統的に検索した(2018年12月まで)。
 主要評価項目:
  術前の児の不安
  (Modified Yale Preoperative Anxiety Scale [mYPAS]で測定)
 副次評価項目:
  術後の疼痛、両親の不安と満足度
 評価法:
  2人のレビュアーによって独立して評価された。

結果:

  • 合計 722 例の患者を対象とした 8 件の研究が解析に含まれた。
  • 手術の種類は様々であった。
  • 3つの研究では、研究の為に開発されたアプリを用いた。4つの研究では、一般にアクセス可能なモバイルアプリを使用したり、動画をストリーム配信した。1つの研究では、術前だけでなく術後も介入した。
  • 前投薬については、4つの研究では介入群は受けておらず、1つの研究では両群とも受けていたが、2つの研究では前投薬について言及されていなかった。
  • 主要評価項目について
    • 6件の研究に基づくメタアナリシス(560例)では、術前の不安が有意に減少し(z検定=3.61、p<0.001)、効果の大きさは中程度であった(Cohen’s d=0.58、95%信頼区間 0.26-0.89)。
      しかし、異質性は有意に高かった(I2=70.0%、p=0.005)。
    • 残りの2件の研究は、測定値の違いや測定ポイントが異なるため、メタアナリシスには含めなかったが、それぞれの結果は児の術前の不安を有意に減少させた。
  • 副次評価項目について
    • 1つの研究で、看護師が評価したアウトカムとして児の痛みが評価されたが、有意な差は認めなかった。
    • 3つの研究で、親の術前の不安が評価されたが、研究によって結果は異なった。
    • 3つの研究で、親の満足度が評価されたが、研究によって結果は異なった。

結論:

 ウェブベースのモバイルヘルス介入は、子どもの術前不安を軽減し、看護中の子どものための非薬理学的な気晴らしツールとして考えられる。同様の介入を用いて子どもの術後疼痛と親の不安を軽減することの有効性については、十分なエビデンスがない。

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