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★いびきや睡眠時無呼吸は手術でよくなるのか?

 いびきで悩んでいる人はけっこう多く、ある調査では男性の24%女性の10%がほぼ毎日いびきをかいていると言われています。(参考文献

 いびきだけではなく、寝ている間に息が止まっている人があります。これを睡眠時無呼吸症候群と言います。いびきは周りの人に迷惑をかけるだけですが(そうはいっても、そのことで悩んでいる人は多いですが)、睡眠時無呼吸は生活習慣病のリスクになったり、日中の強い眠気の原因になったり、身体に悪い影響を及ぼします。

 睡眠時無呼吸症候群については、以前もいろいろ記事を書きましたので、ぜひお読み下さい。

日中の眠気はありませんか?睡眠時無呼吸症候群とは | 耳鼻咽喉科医の独り言

1万年堂ライフに以下の記事を寄稿しました。 いびきと睡眠時無呼吸の違いは?危険度を日中の眠気でセルフチェック – 1万年堂出版1日24時間のうち6〜8時間寝ているとすれば、人生の3分の1から4分の1は寝ていることになります。 「よい睡眠は人生を変える」といっても過言ではありません。 「そういえばうちのお父さんはゴジラのようないびきをかいている」 …

★睡眠時無呼吸はアルツハイマー病のリスクになるか | 耳鼻咽喉科医の独り言

睡眠時無呼吸症候群とは、夜寝ている間に、何度も息が止まってしまう病気です。睡眠時無呼吸症候群とはどんな病気かについては以下のサイトに寄稿しましたので、ご一読ください。 …….

いびきや無呼吸になりやすい人の特徴

 いびきや無呼吸になりやすい人は、鼻やのどに次のような特徴があります。

 これらの特徴があると、寝ている時に鼻やのどの通りが悪くなってしまい、いびきや無呼吸を引き起こすのです。

  • 肥満の人
  • 首が太くて短い
  • 下あごが小さい、横顔を見たときに下あごが後ろに引っ込んでいる
  • 扁桃せんが大きい
  • 口蓋垂(のどちんこ)や軟口蓋(のどちんこのついている場所)が長い
  • 舌が大きい
  • 鼻中隔弯曲症(鼻の真ん中の仕切りが曲がっている)やアレルギー性鼻炎などで鼻がつまっている。

手術で治る場合もある

 これらの特徴の中には、手術をすることで改善できるものもあります。

扁桃せんが大きい人
 ↓
扁桃せんを取る手術(口蓋扁桃摘出術)によってのどの通り道が広がります。

口蓋垂や軟口蓋が長い人
 ↓
口蓋垂を短くしたり、軟口蓋を縫ってひきあげる手術(軟口蓋形成術)によってのどの通り道が広がります。また、口蓋垂や軟口蓋がブルブルふるえていびきの音が出ていたのを改善させます。

鼻づまりのある人
 ↓
鼻づまりを改善する手術(鼻中隔矯正術、下鼻甲介手術など)をすることで、鼻呼吸ができるようになり、口を閉じて寝ることができて、いびきや無呼吸が起きづらくなります。

手術の効果はどれくらい?

 下に示した論文は、CPAP治療やマウスピース装着などの標準的な治療がうまくいかなかった睡眠時無呼吸症候群の患者に対して、手術療法がどれくらい効果があったかを調べた研究です。

 減量指導や寝るときの姿勢を指導して様子をみた患者よりも、手術を行った患者のほうが無呼吸の回数も眠気も改善したという結果でした。

 ただ、大事なことはむやみやたらに手術をすればよいというわけではありません。
 手術というのは身体にメスを入れる負担の大きな治療ですから、手術をすべきかせざるべきかを慎重に考えなければなりません。
 耳鼻咽喉科で診察を受けて、鼻やのどの形をしっかり確認してもらい、手術をするかどうかをよく相談してください。

今回参考にした論文は、
MacKay S, et al. Effect of Multilevel Upper Airway Surgery vs Medical Management on the Apnea-Hypopnea Index and Patient-Reported Daytime Sleepiness Among Patients With Moderate or Severe Obstructive Sleep Apnea: The SAMS Randomized Clinical Trial. JAMA. 2020; 324(12): 1168-1179.
doi: 10.1001/jama.2020.14265.
です。

Research Question:

 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)患者に対する手術治療は有効であるかを評価する。

方法:

 デザイン:
  多施設並行群間 非盲検無作為化試験
 対象:
  従来治療(CPAP療法や口腔内装具装用)がうまくいかなかった
  中等度〜重症のOSA患者(成人)
 期間:
  2014年11月〜2017年10月に症例を登録し、2018年8月まで追跡した。
 介入:
  介入群は修正口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(modified UPPP)低侵襲的舌減量術を行った。
  対照群は減量指導睡眠姿勢のアドバイスを行った。
 主要評価項目:
  無呼吸低呼吸指数(AHI)エプワース眠気指数(ESS)
  (介入後6カ月時点での群間のベースライン調整後の差を評価した)
  (臨床的に有意な差の最小値はAHIは15イベント/時、ESSは2点とした)

結果:

  • 介入群、対照群はそれぞれ51名登録された。
  • 年齢の平均±標準偏差は44.6±12.8歳であり、女性が18%であった。
  • 102名中、91名が追跡できた。
  • 平均AHIの変化は以下の通り。(ベースライン時→介入後6カ月時点)
    • 介入群:47.9→20.8
    • 対照群:45.3→34.5
    • ベースライン調整後の平均群間差は-17.6 [-26.8 to -8.4] (p<0.001)
  • 平均ESSの変化は以下の通り。(ベースライン時→介入後6カ月時点)
    • 介入群:12.4→5.3
    • 対照群:11.1→10.5
    • ベースライン調整後の平均群間差は-6.7 [-8.2 to -5.2] (p<0.001)
  • 介入群のうち2名に重篤な有害事象が認められた。
    (1名は術後5日目に心筋梗塞を発症、もう1名は凝血塊の嘔吐による経過観察入院)
  • []内は95%信頼区間。

結論:

 従来の治療が奏効しなかった成人の中等度〜重度のOSA患者を対象としたこの研究では、口蓋と舌の手術を併用することで、内科的管理と比較して6ヵ月後のAHIと眠気が減少した。

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